この記事をまとめると
■4代目日産ブルーバードには「サメブル」という愛称がついたグレードがあった
■フロントフェンダーにサメのエラのような装飾がされた「2000GT」シリーズを「サメブル」と呼んだ
■もともとの販売台数が少なく、いまでは高値で取引される人気モデルとなっている
すべての610系ブルーバードを「サメブル」というわけじゃない
国産の旧車はいろいろありますが、人気があったり、特徴があって個性が強いので愛称で呼ばれるようになった車種がいくつかあります。「ハコスカ」しかり、「ブタケツ」や「ガメラ」しかり。多くは形が特徴的なため、図形や動物がモチーフになっているものが多いという印象ですが、そのなかでもちょっと異質な響きで一度聞いたら忘れられない愛称で呼ばれている車種があります。それが今回取り上げる「サメブル」です。サメがモチーフなのは名前からわかりますが、いったいどんな形をしているクルマがサメと呼ばれるのか? そしてその車種の特徴について話をしていきましょう。
■なぜ「サメブル」と呼ばれているのか?
今回取り上げる「サメブル」と呼ばれる車種は、日産の「ブルーバード」です。「ブルーバード」という車種自体がいまはもう現行のラインアップからは外されてしまいましたので、若い人のなかには知らないというケースがあるかもしれませんが、この「サメブル」は、1971年発売という50年以上前の車種のため、いまは50代以上の人が知っているかどうかという大昔の車種です。ブルーバードとしては4代目(610系)になり、人気の高い「510ブル」の後継モデルです。
じつは「サメブル」と呼ばれているのはその4代目ブルーバードのなかでも特別なグレードだけなのです。
610系ブルーバードは先代の510系からクラスを上にシフトすることにともなってボディサイズが少し大きくなり、車名も「ブルーバードU」と「U」の文字が追加されました。ちなみに「U」の意味は「user(ユーザー)」と「you」のふたつを掛けて付けられたそうです。
ボディタイプは4ドアセダン、2ドアハードトップ、ワゴン、バンの4種類が用意されていました。当初は先代の510系から引き続き、4気筒のL型エンジン搭載車のみでしたが、発売時期の中盤辺りにL型6気筒エンジンを搭載した「GTシリーズ」が追加されました。この「GTシリーズ」の愛称が「サメブル」なんです。
4気筒モデルの顔つきは、これまでのほかの車種と同じくボディの前面の一面がくり抜かれて、そこにライトとグリル(網またはルーバー状の装飾フレーム)を収めるオーソドックスなデザインでしたが、この「GTシリーズ」は、ボディの面にライトとグリルを直接配置した斬新なデザインを採用しました。
国産車としてはかなりインパクトのあるデザインでしたが、おそらく当時の日産車がお手本としていたアメ車の影響があると思われます。私見ですが、ポンティアックのGTOあたりがモチーフとしてデザイン案が練られたのではないかと想像しています。いまの車種で言うと、BMWのセダンのデザインに近いと言えば近いでしょうか?
そして、その特徴的な顔つきに加えて、フロントフェンダーのサイドマーカーの脇とホイールアーチの後ろに、エアアウトレットを模したルーバー状の装飾が加えられました。これはおそらく、6気筒エンジンを搭載したことをアピールするために、ホイールべースが延長されたことで広くなったドアとホイールアーチの間のスペース(サイドスカットル部)に印象的な装飾を足したのだと思われます。
そうして、その面に直接ライトとグリルを配置した特徴的な顔つきと、フェンダーに施されたサメやエイなどの「軟骨魚類」のエラを思わせる造形が相まって、「まるでサメのようなブルーバードだ」ということから、自然と「サメブル」とよばれるようになったようです。