カリフォルニアはEVだらけもデトロイトはまだまだガソリン! さすが広大なアメリカは地域でクルマ事情がまったく異なっていた (2/2ページ)

カルフォルニアではBEVが一気に普及

 カリフォルニアは、アメリカでも「カリフォルニアだけ」と言ってもいいほど、BEVの普及がめざましい地域。街なかへ出ればまさにBEVがビュンビュン走りまわっている。昨年訪れたときは圧倒的にテスラ車が多く、”テスラだけ”ともいえる風景だった。今年もテスラが多いことは変わらないが、VW ID.4やヒョンデ・アイオニック5、起亜ソウルEVなどテスラ以外のBEVが目立っていたのに驚かされた。

フォルクスワーゲンID.4

「カリフォルニアでは、そもそも高値傾向の続いていたガソリン価格が再び上昇傾向となっています。日々の移動手段がほぼマイカーとなるロサンゼルス地域では、とくにサラリーマン世帯が乗っていたICE車のダウンサイズや、ICE車からBEVへ乗り換えるのが顕著となっております。そもそもテスラ車も値下げを行っており、全般的にいままでより所得の低い層へ(いまは二極化が目立つものの、いわゆる中間所得層)のBEV普及へトレンドが移行しているように見えます」(事情通)。

テスラモデル3

 富裕層の間では「テスラに飽きた」という様子も目立っていると事情通は語ってくれた。値下げにより、もはや自分たち(富裕層)の乗るクルマではないという認識もあるようだ。富裕層は「ネクストテスラ」として、BEVベンチャーなどがラインアップする高額BEVへ乗り換えているように見えた。つまり、いままではBEVはセカンドカー扱いだったが、「段々ファーストカーという見方になってきているのかなぁ」とも筆者は考えている。

 日本国内では、「いくらBEVが普及しても化石燃料で発電するのだから、発電時に温室効果ガス出すでしょ」との話が出るが、カリフォルニア州ではすでに全域へ供給する電気はほぼ太陽光や風力などのクリーン発電となっており、電力需要の増える朝夕などに限り、従来の発電所も活用しているとの話であった。

アメリカのメガソーラー

 カリフォルニア州は面積自体がかなり広大なうえに、内陸部はほぼ砂漠となっている。その砂漠をレンタカーで走れば、道路沿いのそこかしこにメガソーラー(大規模太陽光発電所)や、広大な風力発電所が存在している。そのため、いままでもロサンゼルス地域とネバダ州ラスベガスとを結ぶ州間高速道路15号線(インタ―ステート15号線/I-15)の、ロサンゼルスとラスベガスの中間地点の砂漠地帯に十数器のテスラの充電ステーションがあったのだが、今年訪れるとその充電ステーションの近くにはさらに数十器となるスーパーチャージャー充電器を備えた広大なテスラの充電ステーションが完成していたI-15ではサービスエリアでも急速充電施設が新たに設置されており、人気のない砂漠のなかをひた走るロサンゼルス~ラスベガス間であっても不安なくBEVで移動することが可能となっている。

アメリカのテスラ・スーパーチャージャー

 生活圏内の移動については、カリフォルニア州はすでに補助金を交付し戸建て住宅のかなり多くには充電施設が設置されており、自宅での充電で事足りる状態となっている。つまり、BEVで不便を感じるということはほぼほぼなくなっているように見える。アメリカのなかでもカリフォルニア州が突出してNEV(自然エネルギー車)の普及に取り組んでいるのも事実。

 さらに課題として事情通は、「すでに各メーカーの新車ラインアップをみると、所得がそれほど豊かではない人向けの、日本でいうところのエントリーカー的な小排気量でコンパクト、そして廉価なICE(内燃機関)を搭載する実用車が減っているのが気になります」という問題提起もある。

 中古車という選択もあるが、中古車となると世代が古くなるのは当たり前。となると排気量は大きめで、最新のICEに比べれば環境性能だけでなく燃費性能も劣る。補助金などのインセンティブを利用しても割高なBEV(新車)への乗り換えが難しい層も多く、いまのガソリン価格高騰の影響を所得の低い人ほど受けることになる。

アメリカの中古車販売店

「ハイブリッド車の中古車があるのでは?」との話もあるだろうが、アメリカではカリフォルニアですらハイブリッド車が注目されてきたのは最近で、プリウス以外では現時点では中古車流通は少なめとなっている。今後は選択肢として存在感を見せそうだ。

 富裕層メインからだんだん中間所得層へBEVの普及が進んでいるカリフォルニア州。所得の低い人たちへのBEV普及はシェアリングで対応との話もあるが、どのように今後普及を進めていくのか、その進め方をじつに興味深く今後もウォッチしていきたい。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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