新生JN1クラスの2024年のさらなる発展に期待
「Rally2車両はフィンランドでもテストをしていたんですけど、JN1クラスが新しい規定になったことで、公認を前に日本で競技のなかで走らせてもらえましたし、DATを搭載車両も走らせることができたので、チームとしてはプラスになりました。世界的にみてもユニークな規定ですが、最終戦は10台がエントリー。しかも、タイム差が少なくて切磋琢磨ができているように思います」と語るのは、トヨタGAZOOレーシングWRJの豊岡悟志監督。
さらに、スバルラリーチームチャレンジで監督を務めていたスバルの嶋村誠氏も「これまでスバルはグループA、WRカーと量産車をベースにしたクルマでラリーに参戦してきましたが、JN1クラスの新規定も量産のWRX S4がベース車両として使用できたのでマシン開発を行いました。走るたびに細かいトラブルは出ているし、クルマも大きくて重いけれど、そのなかでチャレンジできているのはスバルにとって得るものが大きい。当初、FA24型エンジンは弱いんじゃないかと見られていましたが、そうではないことがわかってきたし、実際にラリー北海道はVAB型のWRXと比較してもタイムは良かったので、JN1クラスは開発のうえでもいいフィードバックになっています」と語る。
一方、JN1クラスはプライベーターチームにも魅力的なカテゴリーになっているようで、ZEUSオートモーティブクラブスポーツの辻井利宏監督は「これまでJN5クラス、JN6クラスでドライバーの育成を行ってきましたが、チームとしては最高峰クラスを経験したいということもあって、JN1クラスにチャレンジしました。自分たちでパーツの公認を取得できないので独自のアップデートができないし、お金もかかるのでプライベーターチームには大変ですけど、トップカテゴリーとしてのやりがいはあります」と語る。
確かに国際規定モデル、Rally2の販売価格は20万ユーロ、つまり約3140万円で、スペアパーツを合わせると約5000万円が必要だと言われている。国内規定モデルのJP4は、どこまでの改造を施すかにもよるが、外装パーツおよびウインドスクリーンの材質置換まで大幅な改造を施せば、その開発コストはRally2車両に匹敵するに違いない。JP4規定をクリアするためには、高価な安全燃料タンクと国際規定に合致したロールゲージが必要となることから、独自にJP4規定モデルを開発するにしても、中古のR5/Rally2を購入するにしても、JN1クラスには数千万円の初期投資が必要となるだろう。
このように全日本ラリー選手権のJN1クラスは、マシンの性能だけでなく、参戦コストにおいてもトップクラスとなっているが、2024年にはJN2クラスの有力チームがJP4規定モデルでJN1クラスへのステップアップを予定しているほか、R5/Rally2の中古車両が市場に出てくることから参加台数が増加する可能性が高い。
JN1クラスのエントラントが求めるメディアカバレッジやR5/Rally2とAP4の性能調整など、まだまだ課題も多い状況だが、新生JN1クラスはスタートしたばかり。JN1クラスは各ラウンドのスタート前にミーティングを行い、要望を聴きながら課題の解決に取り組んでいるだけに、2024年はさらなる発展に期待したい。