レースの世界で他者を寄せ付けないほどの大活躍!
しかもこの「SiR」、シャシーも専用セッティングだ。スプリングとダンパーのチューニングを見直すとともに、スタビライザーをフロントは他グレードのφ27.2mm×t3.0mmからφ27.2mm×t4.0mmへ、リヤはφ15mmからφ16mmへとサイズアップ。さらにフロントスタビライザーには、インターリング入りのブッシュも採用している。
ブレーキも、フロントベンチレーテッドディスク径を他グレードの14インチから15インチへと拡大。またリヤブレーキをドラムから14インチディスクへ変更するなど、大幅に強化した。
加えて専用設定の205/55R15 87Vタイヤと、15×6JJの軽量アルミホイールを装着。のちの6・7代目に設定された「ユーロR」に通ずる本気度を感じずにはいられない。
そして、この5代目アコードSiRをベースに排気量を2リッターにダウンしたマシンを、ホンダは1996年シーズンよりJTCC(全日本ツーリングカー選手権)へ投入。前身の5代目シビックフェリオが5ナンバーサイズの全幅の狭さや、スプリントレース向きではないB18C型エンジンの素性に苦しめられたのに対し、優に3ナンバーサイズとなりエンジンも一新され、開発体制も大幅に強化されたアコードは、投入直後から強さを発揮する。
レギュレーション解釈の問題などさまざまな逆風に遭いながらも、1996年シーズンは服部尚貴選手、1997年シーズンは中子 修選手がシリーズチャンピオンを手にしたが、同年でホンダはJTCCへの参戦を終了した。
その一方で、ワゴンとクーペは4代目に続いて(クーペは3代目も)アメリカ・オハイオ工場生産モデルを日本へ逆輸入する形で1994年2月に国内デビューするが、両モデルは使い勝手よりもスタイリッシュさを優先したパッケージング。
エンジンはワゴン、クーペとも2.2リッターに絞られ、ワゴンは145馬力/5500rpm・20.2kgm/4500rpmのF22B型SOHC VTECのみ。クーペにはデビュー当初より日本専用にH22Aを搭載する「SiR」も用意され、ワゴンにも1996年9月から1997年10月までの間だけ設定されたが、トランスミッションはワゴン、クーペとも4速ATのみと、セダンよりも肩の力が抜けた雰囲気が商品構成からも醸し出されていた。
だが、そんなアメリカンなキャラクターが、ドレスアップ系のクルマ好きを中心に人気を得る。とくにワゴンは、方向性こそ真逆なスポーツ路線であるが2代目スバル・レガシィツーリングワゴンとともに、当時のワゴンブームの火付け役となった。
そんなアコードも、日本では2023年12月より先行予約が開始され、2024年春に発売予定の新型で早11代目。国内向けは9・10代目と変わらずハイブリッドのセダンのみとなる見込みだが、5代目のような強い個性と多彩な選択肢がいつの日か復活することを願ってやまない。