あえてEVらしさの追求をしないスズキのスタンス
スズキサイドにeWXに関して、軽くインタビューを行えたが、まず聞いたのは「BEVゆえの意気込みや、新たなトライ」的なことだったが、返ってきたのは意外なもの。
「EVだからこうとか、未来的な何かとかそういったことはありません。EVらしさって何? と言われても、それを探し求める必要性はないと思いますし、むしろ生活者がごく普通に毎日のアシとして乗ってもらえるクルマを作ろうということを重視しました」。
スズキ初の軽BEVと聞いて、浮足立ってしまうのは周辺だけで、どうやら当の開発陣はしっかりと地に足を付けて開発を進めているようだ。エクステリアの意匠こそグリルレスのフロントマスク、サイドシルに埋め込まれたバッテリー冷却用のエアインテークなどで、近未来的な軽BEV感らしさをアピールしてはいるが、内装に目を遣ると、また軸足の位置が元に戻ることがわかる。
「タッチモニターとか、ハイテク感を求めるようなことはせず、むしろ使いやすさからアナログに回帰しています。あえてスイッチやボタン類を独立させたり、シフターもプッシュボタンなどではなく、ダイヤル式とすることで、運転中の視点の移動量を最小限に抑える工夫を凝らしています。実用性を重視してのことですが、結果として昨今見直されている昭和レトロ感のようなものも出せたという感じです」。
実車を観察すると、床下に電池を収めることでフロア高が上がる一方、完全にフラットになり、さらにフットスペースに余裕ができるなど、これまでのガソリン車の延長線上にはないパッケージングも予感させる。シートの脚部分をパイプ式とし、リヤはベンチシートとしたほか、基点をマグネットで移動式として自由にレイアウト変更できる、ゴム紐のバインダー/ストラップのような機能も面白い。使いにくいデザイン小物より、100均で売っているセンスとコスパを両立したお役立ちグッズを狙ったかのようなトライもじつにスズキらしくて好感が持てる。
周囲の期待をよそに、実直なスタンスで軽BEVの開発を急ぐスズキ。eWXが市販モデルとして、いったいどんな車名で出て来るのか、その日を楽しみに待ちたい。