その場所ごとに決められたコーティング剤を使おう
■親水コーティングの○と×
一方で親水タイプはどうでしょうか。フロントウインドウに施工して雨に降られた場合、雨粒はすぐに馴染んで広がります。そのまま次々と付着しますが、当たったそばから広がるので、ガラス表面は薄い水の膜で覆われた状態になります。この状態は視界的に見るとあまり良いとは言えません。
撥水タイプは雨粒が残るため、降水量や外の明るさによってはその存在が気になって不快だ、という見方もありますが、親水タイプは言ってみれば薄いビニール越しに見ている状態に近いので、たとえば前走車のナンバーが読みづらい、という感じの視界になります。
このようにフロントガラスのような広い面ではデメリット寄りの特性と感じますが、それがドアミラーにとっては有効な特性となります。
ドアミラーは面積が狭いので雨粒とクリアな部分の比率が見えづらい方に傾きます。そして、フロントウインドウのように走行風が当たらず粒が残った状態のため、付いた雨粒はずっとそのままです。これが親水タイプの場合、雨粒は残りません。少しぼやっとするのは避けられませんが、視界の認識性は格段に親水タイプのほうがいいという見方が多いようです。
ちなみに疎水タイプですが、これは両者の中間というか、効果がマイルドな撥水タイプという感じなので、フロントウインドウ用コーティング剤としてあまりアピールする点がなく、実際にその特性を謳った商品はほとんどないようです。
■撥水コーティング剤の種類、シリコン系とフッ素系の違い
ということで、フロントウインドウには撥水タイプのコーティング剤が多く販売されていますが、その組成を見てみると「シリコン系」と「フッ素系」の2種があって、それぞれ特性の違いがあるようです。
シリコン系のコーティング剤の特徴を箇条書きしてみると、
・手軽に施工できる
・撥水効果が(比較的)高い
・価格が控えめ
となります。
手軽で安いということは、興味が涌いた人に「お試しで買ってみよう」と思わせる効果も高いため、市販の商品の多くはこちらのシリコン系のようです。
一方のフッ素系の特徴は、
・効果が長持ちする
・施工に少し手間が掛かる
・価格が安くない
となります。
こちらは耐久性が高く長持ちするのがいちばんのメリットなので、「頻繁に塗り直しをするのが面倒」という人や、降水日が少ない地域や季節に向いていると思います。
また、シリコン系のコーティング剤は効果が切れかかると撥水状態のムラが起こるため、視界が悪くなるという傾向もあるようです。それを少しでも遠ざけたい、ということでフッ素系を選ぶ人もいるようです。
また、摩擦特性の違いも無視できません。フッ素系のコーティング剤の特性として、摩擦係数がシリコン系より高い傾向があり、ワイパーを作動させたときに、雨の降り始めなどの乾いた状態で「バババ……」とビビリが発生することもあるようです。シリコン系では起きないとは言えないのですが、その可能性が少し高いという点も知っておいて損はないと思います。
■ガラス用ではないコーティング剤の使用はNG?
いまどきはいろんな情報が飛び交っているので、裏ワザ的にイレギュラーな使い方を紹介しているものもよく見かけます。このフロントウインドウ用のコーティングもいくつかの裏ワザが出まわっているようです。
まず、つや出し系のシリコンスプレーを使うというもの。これは期待したほどの効果が見込めないようです。そもそもツヤを出すのが目的の商品なので、撥水用に開発された製品と同じ性能を求めるのは間違っています。
続いては、ボディ用のコーティング剤を施工するというもの。これは場合によっては効果があるものもあるかもしれませんが、やはり専用品を用途以外で使うと効果は減少すると思います。ボディ用のコーティング剤は、塗装面に定着しやすいように調整されていますので、ガラスとの相性はまったく保証されていません。これは推測ですが、施工してすぐは効果があっても、定着しきれず剥がれてしまう可能性が高いのではないでしょうか。
こうしてさまざまな製品が販売されているフロントウインドウ用コーティング剤ですが、この記事である程度の知識を蓄えたあとで、余裕があればいろんな製品を自身で試してその違いを実感してみるのも楽しいと思います。