この記事をまとめると
■いま、全体の5〜6割が残価設定ローンを利用して新車を購入している
■物価高騰などでディーラーの利益が圧迫され乗り替え時に下取りに出すうま味が少ない
■それゆえ中古買い取り店が「お得」と言いたいがビッグモーター事件でそれも崩れた
魅力的な残価率を維持しないと新車販売もまわらない
いま新車販売の世界では残価設定ローンを利用しての新車購入が目立っている。販売現場で聞けば、全体の半分から6割が残価設定ローンを使っているといった話も聞く。残価設定ローンは、3年や5年後の当該車種の残価相当額を支払最終回分として据え置くことで、月々の支払い負担を軽減するというもの。
日本では、かつて企業でもリースというものがなかなか馴染まず、ましてや一般消費者レベルでは「サブスク(サブスクリプション)」などといま風に表現しても、若い世代はまだしも年配になるほどなかなか浸透しないようにも見える。トヨタやホンダ、スズキなどが新車の個人向けリースプランを用意しており、それでもじわじわと普及はしてきているようである。
残価設定ローンの魅力を左右するのが当該車種の残価率。あくまで予想で設定するものでもあり、設定残価率維持のためにも残価設定ローンを利用すると、決められた月々の走行距離を超えたり、内外装の汚れや傷をチェックして基準点数を超えると、超過料金を取られることもある。
ディーラーとしても販売した新車を、原則的に(再ローンを組んで乗り続けることができる)3年や5年後に当該車両を引き取り再販することになる。したがって、走行距離などに縛りを設けることで、一定レベルのコンディションを維持。当該車種の中古車相場を維持することで、魅力的な残価率を維持する必要があるのだ。
事情通は、「以前は残価設定ローンを組むと、返済中の他メーカー車への乗り換えなどもできず、同じメーカー車を乗り続けることになっていました。しかし、いまでは残債があっても下取りして下取り査定額で残債を相殺するのが、多くのメーカー系正規ディーラーでも可能となっております。となると、自分たち(メーカーやメーカー系正規ディーラー)の手もとを離れるクルマも多くなってきたので、さらなる囲い込みを図る意味でも、個人向けカーリースが登場してきたものともいえるでしょう」と話してくれた。
ローンで買うか現金で買うかは別としても、いままでは購入を希望する新車を扱うディーラーに下取り車として処分するのが常道とされてきた。車両本体価格からの値引き額に幅があり、オプションからも積極的に値引きができ、さらに購入予算に近づけるために、下取り査定額に値引き不足分を上乗せすることが一般的だったからである。
しかし、いまでは物価高騰などにより値引き原資であるディーラー利益が圧迫され(コストアップ分を値上げをしたとしても十分に吸収することができない)、車両価格からの値引きを原則ゼロとする車種も登場してきた。さらに、オプションも製造コストアップを吸収するほどの値上げもなかなかできないなか、オプション値引きも抑えられてきた。以前に増して新車を売っても儲からなくなってきたなか、下取り車の再販のほうが儲かるとするディーラーも多くなり、下取り査定額の上乗せも期待できなくなっている。