この記事をまとめると
■完全自動運転に向けて自動車メーカー各社が手放し運転に取り組んでいる
■現時点でもっとも高度な制御がなされている手放し運転は日産のプロパイロット2.0だ
■スバル、トヨタ、ホンダ、海外勢ではBMWも条件下での手放し運転を実用化している
渋滞時の運転疲労を軽減してくれる手放し運転
将来の自動運転に向けて、各メーカーが「ハンズフリー」や「ハンズオフ」と呼ぶ手放し運転に取り組んでいる。大まかにいうと、高速道路等を運転中で、ACCや車線維持機能を維持したまま、一定の条件がそろうとステアリングから手を放すことができて、ものによっては車線変更までもクルマが手伝ってくれるという技術である。
ただし、自動運転レベル2であり、機能としてはあくまで「運転支援」であって、「自動運転」ではない。
ドライバーはハンドルから手を放すことができても、即座にステアリングを握れる状態でいなければならず、何かあったときにはドライバーの責任となることを念を押しておこう。
執筆時点において、もっとも高度なことをやってのけていると筆者が思うのは、4年も前に日本勢として先陣を切った日産の「プロパイロット2.0」だ。本稿掲載時点で、皮切りとして登場したスカイラインは事情により設定がなくなってしまったが、アリアとセレナにはある。
機能としては、車両の周囲360度をセンシングした情報に、GPSと3D高精度地図データを組み合わせて、道路上の正確な位置を把握するとともに、高速道路上で周囲の車両の動きをリアルタイムで把握することで、ルート走行中の分岐や追い越しのための車線変更の適切な開始タイミングをシステムが判断し、ドライバーに提案するというのが特徴だ。
車線変更については、約60km/h以上で走行中に、前方車の速度などの条件が整うとシステムから提案が出され、それを承認するボタンを押すと作動する。もしくはウインカーレバーを操作して任意のタイミングで作動させることもできる。追い越しが完了すると、同じ操作により元の車線にもどる。
同様に、設定した目的地に対して、ルート上にある高速道路の分岐や出口で、システムからの提案を承認すると車線変更が支援され、こちらも状況によってハンズオフが可能となる。
こんなに便利で有益な機能が、あえて制限速度プラス10km/h、最高速度が110km/hまでしか使えないようにされているのは、やむをえない事情があるとはいえ、じつにもったいない気もするのだが、極めて高度な制御をすでに実現していることには違いない。
日本勢では日産に続いたのがスバルだ。2020年10月に発売の現行レヴォーグで初めて採用した最新の「アイサイトX」において、渋滞ハンズオフアシストを実現している。
車速が50km/hを下まわると機能が使えることを示す表示が出て、スイッチ操作により起動する。停止して再発進する際に既存のツーリングアシストでは停止から約3秒経過するとスイッチやアクセルペダルを操作する必要があったところ、アイサイトXならその必要もなく、クルマにまかせきりで大丈夫になった。
なお、ハンズオフ機能についても、あくまでカメラを主体に制御している点はスバルらしいが、料金所前やカーブ前で車速を抑制するなどのその他の機能には、GPSと3D高精度地図データを活用している。
もちろんスバルが早くから注力しているDMS(ドライバーモニタリングシステム)も重要な役割をはたしていて、よそ見すると警報音が発せられ機能が停止するほか、異常時対応システムをいちはやく装備した点も特筆できる。
なお、本稿掲載時点では、WRX S4やアウトバックにも搭載されている。