凄まじい走りの実力でAMGの電動モデルを理解する
ピットロードからコースインしアクセル全開加速を試みると、電動モーターのトルクピックアップが素早く、エンジンのターボブーストも加わって身体がのけ反るような強烈な加速Gが発生する。システム最大トルク1020Nmを4輪駆動で路面に伝えるので、加速フィールは尋常ではない。
第1コーナーをターンしてコカコーラコーナーまでを直線に見立てて加速させれば、車速は200km/hに達する。ブレーキングとともに左へステアリングを切り込むと、若干アンダーステアを示しながら安定した姿勢で旋回していく。続く右100Rコーナーはパワーをかけながら旋回加速していくが、リヤが流れる兆候はまったくない。それもそのはずで、リヤにも操舵システムが備わった4輪操舵となっているのだ。Cクラスに後輪操舵が装着されたのは初めてで、小型な車体ながら大パワーを持て余すことがない。
ヘアピンへフルブレーキングでアプローチし、300Rへとまた全開加速を行う。ダンロップコーナーまでに210km/hを超える車速に達し、再びフルブレーキング。続く登り区間の第3セクターはアクセルワークと的確な変速タイミングでリズミカルにクリアできる。
最終コーナーを立ち上がり、富士スピードウェイの特徴である1.5kmのホームストレートをアクセル全開で駆け抜けていく。ストレート中ほどのコントロールタワー前で速度は250km/hを超え、ストレート後半では260km/hオーバーまで車速が高まる。Cクラスのセダンがこの速度で疾走していく様は異彩を放っているといえるだろう。
そして、1周アタックを敢行。各コーナーを攻めつつ1周してタイムを見ると1分59秒7が記録された。しかし、だ。タイヤやブレーキのウォームアップが済んで、さらにタイムを上げようとすると、翌周は各コーナーをよりハイスピードでクリアしているにも関らず、ラップタイムは2分1秒台に低下。最高速度も250km/hまでしか伸びていない。じつはモーターを駆動するバッテリーの充電量が低下し、絶対的な動力性能が下がってしまっていたのだ。現代のF1も同様で、タイムアタックラップに全エネルギーを放出したら翌周はチャージラップとして電力を蓄える必要があるのだ。
C 63 S E-performanceもF1と同様なバッテリーマネージメントを採用していて、充放電コントロールを適切に行う必要がある。6.1kWhのリチウムイオンバッテリーを蓄電池として、よりキャパシター的に制御することがマネージメント上のキーポイントで、充放電を頻繁に繰り返すことで高まる温度管理を徹底的に行っている。F1で採用されているのと同様なバッテリー冷却用の冷媒を採用していて、バッテリー温度は常に45度に保たれているという。回生強度を高めてチャージラップをすればまた最高出力が復活し、最高性能が引き出せる。
じつはリヤアクスルのモーターユニットには2段変速ギヤが装備されていて、最大1万3500回転回るモーターで最高速260km/h以上を可能としているのだ。メルセデスAMGのP3HVは環境性能を高める目的だけでなく、AMGとして相応しい圧倒的な動力性能を引き出すために必要なのだとしている。
電動化することでさまざまな制御が正確に行え、ドライバビリティも向上する。それでいて動力性能はV8ガソリン車を凌駕している。この走りの実力を知れば、AMGの電動モデルを理解することができる。
もちろんドリフトモードも備えていて、ドーナツターンやドリフト走行も可能だった。
今後は、GT 63から始まりE 63、C 63、そしてS 63にも「E-performance」が設定され、これからのAMGのコア技術として、圧倒的な動力性能を誇示していくことになる。