数百万円もするものを週一以上で売って当然!? 新車販売現場は想像以上にハードだった (2/2ページ)

大きく変わりつつある新車販売現場

 アメリカでも管理顧客などからの紹介客をベースに販売するセールススタッフが多いとも聞くので、日本だけでなくアメリカでもセールススタッフを介さないオンライン販売が主流になると、新車販売現場の風景は大きく変わるかもしれない。

 とはいうものの、法律で対面販売禁止とでもしないと、それを希望する人も依然として残るだろうから、すぐに「対面販売はしませんよ」というわけにもいかないだろう。オンライン販売主流となれば人件費削減にも貢献する。そのなかでお得意さまを多く持つセールススタッフをどの程度残すことができるかが、当面はディーラー同士の基礎体力の差をもたらしそうでもある。

自動車ディーラーの外観

 いまの世のなかでは、「現場軽視」というものがまかり通っている。最近話題の大手買い取り&中古車販売業者の問題では、創業社長の後継者とされていた社長の息子が副社長として実権を握るようになってから、社員への無理難題が増えてきたとも報じられている。この息子も実際に車両買い取りや中古車販売業務を経験せずに副社長になっている。

 かつて自動車メーカーに入社した社員でも、「現場研修」として新車ディーラーで数カ月新車を売る実習を当たり前のようにしていた。

「昔、販売実習をやっていたあるメーカーでは、新車の売れない8月と事業年度締め上半期末の9月の2カ月で9台売らないと、希望部署への配属はかなわなかったそうです。この9台というのが微妙で、親戚や友人に頼み込んでも9台売るのはかなり難しいのです。暑い盛りのなか外まわり営業をするので日焼けで真っ黒になっていたとも聞きます。受け入れるディーラーとしても、『メーカーの新入社員だってあれだけ頑張っている』と自社のセールススタッフにハッパをかけることができたそうです。遠い昔の美談ですけど、いまなら……」(事情通)。

自動車ディーラーでの商談イメージ

「新車をどうやって売っているのだろう」、これを知るために必ずしも新車販売業務に携わらなければならないというわけではない。ただ、調べたりして頭だけでわかったことと、身体で覚えた経験に裏打ちされた理解では、その深みには大きな差が出るのは明らかだろう。最低でもどこかの首相もかつてよく言っていたが、「耳を傾ける」、つまり販売現場に耳を傾け、理解に努める気持ちだけは持ち続けてほしい。販売現場が理解できなければ、当然消費者もなかなか理解できてもらえないものと筆者は考えている。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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