この記事をまとめると
■「空港用化学消防車」は航空機事故が発生した際に活躍する
■普通の消防車とは異なる装備を持っており、車両の形状も専用となっている
■通常の消防車が3000万円程度という価格に対して2億円以上の価格となる
「空港用化学消防車」は”超”がつくほどハイスペック
万が一火災が発生してしまったとき、速やかに現場に急行し、消火活動をするための消防車。できればお世話にならないに越したことはない特殊車両となっているが、もっとお世話になりたくない、というかこの車両が活躍するシーンがこないことを祈りたいのが「空港用化学消防車」と呼ばれる車両だ。
「空港用」とあることからもわかるように、基本的に空港に配備される消防車となっており、空港に置いて万が一航空機事故が発生してしまった際、迅速な現場到着と消火活動、そして人命救助を行うために配備されているもの。

そのため、見た目も一般的に多くの人が思い浮かべる消防車のスタイルとは異なり、特殊車両然としていることも特徴となっている。
もちろん求められる性能も一般的な消防車よりも過酷で、もっとも大きな違いは、1万リットルを超える大きな消火用のタンクを備えているという点だろう(機種による)。というのも、空港の滑走路には当然ながら消火栓などが備えられていないため、事故の際の消火に使用する水は自車に蓄えておかなければならないのだ。

ただ燃料火災においてはやみくもに水をかけるだけでは鎮火させるどころか、火の勢いを増してしまう可能性もあるので、消火剤と水を混ぜたものを放射する必要がある。なので、これらの薬剤なども当然搭載されている。
また、飛行機は車体のサイズが非常に大きく、燃料が左右の主翼内に蓄えられているため、車両を走行させながら消火活動ができるようになっている点も大きな違い。そのため、運転手のほか、消火ノズルを操作する人員とそれを補助する人員の3名が乗車できるようになっている(通常の消防車のように、消火ホースを持っての消火活動も可能)。
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そして空港内のどこで火災が発生しても、迅速に現場までたどり着けるために高出力なエンジンを搭載しているほか、滑走路外など舗装されていない場所での事故にも対応できるように、大径タイヤの採用や前後のボディ形状を極力路面と干渉しない斜めの形状とすることで、圧倒的なアプローチアングルとデバーチャーアングルを実現しているのも特徴となっている。

このように非常に特殊な装備を多く持つ車両だけに価格もケタ違いとなっており、一般的な消防車が3000万円以上であるのに対し、空港用化学消防車は2億円前後となっているが、尊い人命が救われるのであれば決して高くないと言えるだろう。