この記事をまとめると
■軽油はディーゼルエンジン向けの燃料として使用され、税金の掛け率が低いため安価だ
■軽油は寒冷地だと凍る場合があるために5つの種類が設定されている
■全国の軽油を寒冷地仕様にするのはコストの問題から現実的ではない
軽油はそもそもなぜ安い?
ガソリンの値上がりがお財布に厳しい昨今、ガソリンスタンドの横を通るたびに価格のチェックをしている人も多いのではないでしょうか。そしてそのときに、その下に並んだ軽油の価格を見て「安くて良いなぁ」と思った人も少なくないでしょう。
昔は軽油を燃料にする“ディーゼルエンジン”は、トラックやバスなどのお仕事グルマのためのエンジンという認識でしたが、いまはディーゼルエンジンも環境対応が進んでクリーンなイメージに変化しているのに加えて、昔からディーゼルエンジンが普通に搭載されている輸入車が多く入っていることもあって、徐々に身近な存在になってきていると感じます。今後は軽油を給油する機会も増えていくでしょう。
そのように認識の変化が感じられる軽油ですが、じつはその特性など深く考えたことはないという人は多いのではないでしょうか。ここでは軽油の基本と、じつは給油する地域によって種類がわかれていることなどについて紹介してみようと思います。
軽油の由来は?
まずは「軽油」という名前について。その名の通りに「軽いから軽油なんでしょ?」と考えますが、じつは違います。体積あたりの重さを示す比重の数値で見ると、ガソリンが0.73~0.76、灯油が0.78~0.80、そして軽油が0.80~0.84となっていて、スタンドで売っている石油製品のなかでは軽油がいちばん重いんです。
ではなぜ「軽油」と呼ばれるのでしょうか? これは重油に対して軽いのでそう呼ばれるようになったという説が有力のようです。
ちなみにガソリンが英語由来なのに、同じ燃料の軽油(や灯油)が和由来の名称なことに違和感を感じませんか? どうしてそうなったのかは不明ですが、ガソリンを和名にすると「揮発油」になります。意味合いも響きもちょっと違和感があり、定着しなかった理由がわかる気がします。ちなみに軽油の英語名は「ディーゼル・フューエル」で、開発した博士の名前に由来するそうです。
軽油とガソリンは何が違う?
ガソリンと軽油のいちばんの違いは“沸点”です。原油から精製するときは約350度に過熱して蒸溜しますが、ガソリンは30〜180度で先に蒸発するのに対して、軽油は240〜350度で蒸発するので、蒸留の過程では最後のほうになります。
この温度域の違いがエンジンの燃焼特性にも影響しており、ガソリンが常温で着火しやすいのに対して、軽油は高温でないと着火しません。この特性の違いがあるため、ガソリンエンジンに軽油を、ディーゼルエンジンにガソリンを入れるのはNGとされているのです。最悪の場合はエンジンを壊すこともあります。
軽油が安いのはなぜ?
単純に考えて、軽油は蒸留するのに高温でエネルギーが必要なためコストが掛かるように思いますが、実際に安いのはなぜでしょう? 答えは税金の掛け率が低く設定されているからです。個人的に利用することが多い乗用車が使うガソリンの課税率は高く、流通やインフラのカナメとなるトラックやバスに使われることが多い軽油の課税率を低くすることでバランスを取っているのです。