この記事をまとめると
■昔の自動車セールススタッフは一種の「御用聞き」のような存在だった
■担当する顧客のクルマに関することをできる限り叶え、要望をなんでも聞いていた
■最近では自身の利益を稼ぐために問題行動に走るスタッフが増えている
まるで「何でも屋」のようだった自動車セールススタッフ
50歳代後半の筆者ぐらいでもかすかに記憶しているのが、「御用聞き」。これはたとえば、酒屋さんや魚屋さん、八百屋さんなどでお得意様の家へ行き注文を聞いてまわることで、その後注文された商品が、現代風に言えばデリバリーされることになる。長年国民的アニメとして日曜夕方に放映されている作品でも御用聞きが登場してくる(現状は未確認)のを思い出す人もいるかもしれない。
いまは働き手不足や、ライフスタイル、価値観の変化もあり、訪問販売から店頭販売にほぼ切り替わっている新車販売におけるセールススタッフも、過去には御用聞きに近い立ち位置だったようにも見える。もう少し格好良くいえば、お客の家庭のマイカーに関するコンシェルジュという表現もふさわしいかもしれない。
日常的に新規開拓も含めた外まわり営業をメインとし、新規開拓の合間に既納客のもとに顔を出し「どうですか?」などとコミュニケーションを重ね、人と人とのつきあいがメインとなり、信頼関係のもとに、セールススタッフが「そろそろ乗り換えどきですよ」と勧めると、「それでは頼むね」といった流れで、乗り換えするクルマのチョイスも含めセールススタッフにお任せというユーザーも昔は多かったのだ。
また、単に新車への乗り換えだけでなく、「いい洗車のやり方はないか」や「スタッドレスタイヤが欲しい」、「セカンドカーを売却したい」などなど、顔を出したときにいろいろ持ち込まれるクルマに対する案件に、少々自分の立場を逸脱するケースでも対応することもあったそうだ。ここ最近は個人情報保護の重視やコンプライアンスの強化などもあり、セールススタッフの活動範囲は狭まっており、御用聞きというような立ち振る舞いはなかなかできなくなっている。
むかしむかしの新車販売の世界では、セールススタッフが仕事で使うクルマに積載するマストアイテムが「ブースターケーブル」であった。まだまだロードサービス自体もその存在が限られた時代でもあり、それに加入している人も少なく、バッテリーが上がると担当セールススタッフに連絡が入るケースも多く、お客のもとへ行き対応していたようだ。新人セールススタッフに対しブースターケーブルは必需品だと教える先輩も多かったようだ。
そのほか、一部ディーラーオプションなど用品の装着についても相談にのっていたと聞く。これもいまでは不可能なケースがほとんどだが、ユーザーがカー用品量販店で購入した汎用製品を、正規手続きをせずにセールススタッフ本人がメカニックへお小遣いを払って、非正規で装着することもよくあったそうだ。ユーザーも正規手続きを経ていないことは承知しているので、取り付け作業に対するリスクは承知していた。
新車納車時には純正カーオーディオは汎用品に比べ配線が簡単だったので、社員割引きで製品を購入し、自分で取り付けることで製品に対する値引きと取り付け工賃の節約を行うセールススタッフもいた。サイドバイザーなどニーズの多いディーラーオプションの装着は、昔のセールススタッフの多くは、その装着方法をマスターしていたとも聞いている。