思う存分「Modulo X」を楽しめる日に
その後は参加者全員での記念撮影を経て、しばらくはフリータイム。オーナー同士での交流を楽しんだり、またModulo X開発メンバーとの交流時間が設けられた。
展示エリアに置かれていたのは、今年で誕生10周年を迎えたModulo Xの歴代モデル。2013年に発売されたN-BOX Modulo Xに始まり、N-ONE、フリード、ステップワゴン、ヴェゼル、S660、そしてフィットe:HEVの全7車種だ。いずれも「実効空力」をコンセプトに掲げたエアロパーツや、「四輪で舵を切る」ハンドリングを実現した専用サスペンションや専用ホイールによって独自の走りを実現したモデルである。
さらにテント前には、開発車両として実際にテストコースを走行しているフィットe:HEVの姿も。ボディサイドに「実効空力”感”」と記されたこの車両は、車両の各部にパープルに塗装された補強パーツが装着されている。これらを脱着しながら走り込むことで、「クルマの変化」を感じながら開発が進められていくのだ。また、テストドライバーだけでなく、デザイナーやクレイモデラーもステアリングを握って車両の変化を感じるのがModulo流だが、助手席には往年のW124世代メルセデス・ベンツの純正シートが装着されていた。もはやクラシックといえる世代の車両だが、これを超えるデキの純正シートは存在せず、もっともクルマの声を乗員に届けてくれるシートなのだという。
そして午後からは、事前に申し込みをして抽選で選ばれたオーナーの体験型コンテンツ「群サイTAXI」と「実効空力デバイス試乗」が行われた。トークショーでも語られた、Modulo Xの走りを磨いた舞台でもある群サイ=群馬サイクルスポーツセンターのコースを、ホンダアクセススタッフが運転するステップワゴンModulo X、またはフリードModulo Xに同乗して巡るのがコースTAXIだ。なんと終盤には、大津弘樹選手がドライバー役として登場するサプライズも! 前日にはSUPER GT第6戦を戦った、現役バリバリのレーシングドライバーが運転するModulo Xに乗れる大サービスというのもあって、クルージングスピードとはいえ、助手席に乗った来場者は感動の面持ちだった。
いっぽう、参加者が自ら運転できるコンテンツとして用意されたのが「実効空力デバイス試乗」だ。Modulo Xのキモといえる「実効空力」コンセプトとは、デザイン性だけでなく機能を持ち合わせたエアロパーツを意味し、さらに限界領域ではなく日常の市街地走行においても違いを感じされることを掲げている。
試乗車には現行N-BOXが用意され、シビック・タイプR用リヤスポイラーなどに装着されている鋸歯(シェブロン)形状の実効空力デバイスをルーフに装着、群サイのコース内を参加者自らが運転して体感できるというもの。助手席にはホンダアクセスの湯沢さんが同乗し、参加したModulo Xオーナーは実効空力デバイスの解説を聞きながら、デバイス有り/無しの違いを実際にステアリングを握って感じることができた。
やがて楽しかった1日も終盤が近づき、ふたたびホンダアクセスのModulo X開発メンバーがステージ上へ。15時から開催された閉会式では、土屋圭市さん、そして福田正剛さんがこの日に参加したModulo Xのなかから「印象に残った1台」を発表。それぞれのオーナーには記念品がプレゼントされた。
また、閉会式では、Modulo開発統括としてチームを見守ってきた福田正剛さんが、ホンダアクセスを定年退職されることが発表された。今後は湯沢さんにすべてを託し、また新しい純正アクセサリーのModulo、ならびにコンプリートカー・シリーズのModulo Xを作っていってもらいたいとのメッセージには、来場者からも大きな拍手が贈られた。
閉会式のあと、この日の最後のコンテンツとなったのは、全国から参加した175台のModulo Xが群サイのコースを1周するパレードランだ。各車種ごとに隊列を組み、ホンダアクセスのスタッフが運転する車両を先導車として1列で走行。同乗走行や体験試乗といったコンテンツは参加者が限定されていただけに、このパレードランで初めて群サイを走ったというオーナーも多く、楽しかった1日を惜しむようにゆっくりと走行が行われた。
コースにはホンダアクセススタッフがお見送りに立ち、目の前を走っていく車両へ手を振るたびにオーナーや同乗者も手を振って返答するなど、メーカーとオーナーの暖かい繋がりを感じさせるイベントとなった。
2023年に10周年を迎えたModulo Xシリーズ。残念ながらこの秋の時点で新車ラインアップに名を連ねているのはフリードModulo Xのみと、やや寂しい状況となっている。しかし今回、湯沢さんが後継者に指名されたように、Modulo Xの魂は次世代の開発者へと確かに受け継がれている。この日、たくさんのオーナーと交流して充実した表情を見せる開発メンバーの姿を見ていると、近い将来に必ず新たなModulo Xは誕生するだろうと確信を抱いた。
これだけ多くのオーナーに笑顔を届けてくれるコンプリートカー・シリーズなのだから、10周年に止まらず20周年、30周年と続くことを期待したい。まずは現行N-ONE RSをベースにしたModulo Xなんていかがだろうか? S660以来となる6速MT車が設定されれば、きっと多くのファンが喜ぶだろうと思うのだけれど……。