この記事をまとめると
■EVの駆動方式は前輪駆動、後輪駆動、4輪駆動があるがFRやMRなどは見かけない
■寸法が小さく済むモーターは駆動輪のそばにモーターを搭載しやすい
■エンジン車とEVは違う乗り物として理解する必要がある
FRやミッドシップのEVってないの?
電気自動車(EV)の駆動方式は、前輪駆動、後輪駆動、4輪駆動(AWD=オール・ホイール・ドライブと呼ぶ場合もある)にわけられ、そこはエンジン車と変わらない。しかし、エンジンの車載位置と駆動輪を表す、フロントエンジン・リヤドライブ(FR)や、ミッドシップによる後輪駆動(MR)とするEVはあまり見かけない。
理由は、エンジンより寸法が小さく済むモーターの場合、駆動輪のそばにモーターを搭載しやすいためだ。また、モーターと電気制御のインバーター、減速機といった駆動系を一体化とし、システム全体を小型化すると空間効率を高められる。
これを、X in 1(エックス・イン・ワン)という。Xは、モーターやインバーターなどの部品をさし、そうした個別部品がいくつあるかによって数字化される。たとえば、3 in 1というように。こうして、前輪駆動なら前輪側にモーターや駆動系を搭載し、後輪駆動であれば後輪側に一体化した駆動システムを搭載する事例が多く、エンジン車の言い方に倣えば、FFやRRは存在するが、FRやMRはほとんど存在しないことになる。
ただし、たとえばフォルクスワーゲンのID.4の場合、モーターの搭載位置が後輪より若干前よりであるため、あえてMRとは言っていないが、MRのようなモーター搭載方法となり、後輪を駆動している。
ほかに、小柄なモーターと駆動系を一体することにより、高電圧の配線の長さを短くすることができる。ことに配線が太くなりがちな高電圧系を近くにまとめて配置することで、重量の軽減や、原価の低減にも役立つ。
モーターも、バッテリーを含めて冷却は必要だが、エンジンほど高熱にはならないので、大きなラジエターが不要であったり、冷却方法もエンジンとは別の考え方が用いられたりする。当然ながら、エンジンの排気系はEVでは不要だ。
動力源の方式や、燃料に何を使うかなどの違いによって、部品の配置に別の発想が必要であり、現状、EVといえどもエンジン車と見かけは似ているが、部品配置などの考え方は別物になる。当然ながら、外観の造形や、車内の居住性や荷物の車載性なども、今後はさらに新たな展開がみられるかもしれない。
給油をするか、充電をするかということも含め、EVはエンジン車と違う乗り物であることを理解する必要がありそうだ。