この記事をまとめると
■新車ディーラーでは試乗車が置かれるのが当たり前になっている
■日本では「購入希望車の試し乗り」というスタンスだがアメリカでは異なる
■アメリカでの新車市場は「コンディションチェック」という意味合いが大きい
日本とアメリカでは同じ”試乗”でも目的が違う
日本の新車ディーラーにおいても、試乗車が用意されるようになって久しい。同地区内の同じ資本のディーラー店舗同士で試乗車をシェアし、定期的にローテーションで数台ずつ各店舗に置き、展示車代わりにも使っているところもあると聞く。そのようななか、出かけた店舗に試乗したかった車種がなかったとしても、シェアしている店舗にあればそこから試乗車を後日持ってきたり、その日に置いてある店舗へ出向き試乗などができるようになっているとのことでもあった。
昭和のころは「試乗させなきゃ新車が売れないようでは半人前」ともいわれた。昭和の末期でもまだまだマイカーが持てるだけで満足できた時代ともいえるので、そもそも試乗してじっくり吟味したいというお客も少なかった。ただし、「車庫に入れば買う」といったような場合では、どこからか当該車を手配してお客の自宅車庫に実際に停めたりしていたようである。
※画像はイメージ
ディーラー試乗は一般的に店舗周辺をぐるりとまわる程度なので、よほどのクルマ好きの人でもなければ、その車種の走りの特性などを把握するのは難しいようにも見える。しかも、新車が欲しいオーラ全開のなか試乗しても、自ら選んだ購入希望車でもあることだし、なかなか客観的な辛口試乗というものもできないだろう。
日本におけるディーラー試乗は、購入希望車としてピックアップした車種がどんなものなのかを試すものといっていいだろう。
一方、アメリカのディーラーでも試乗というものがある、というより日本以上に盛んである。日本の新車販売は原則として「受注販売(受注してから工場へ生産をディーラーが発注する)」となるが、アメリカではディーラーに並んだ在庫車から選ぶ在庫販売がメインとなる。しかも、そのような在庫車について購入契約を結ぶとそのまま乗って帰ることができるので、アメリカにおけるディーラー試乗は、自分が実際に所有することになるクルマのコンディションをチェックするための試乗となる。
その昔は、新車と言えどアメリカンブランド車では品質が極端に落ちた時期があり、さらに個体差も激しかった。そこで、自分が乗って帰る予定、つまり買いたい在庫車を実際に試乗してコンディションを確認する必要があったのだ。
いまは昔ほどアメリカンブランドでも個体差は大きくないようなので、アメリカのディーラーにおける試乗はその名残りのようなものもあるといってもいいだろう。そして、自分の愛車になるかもしれないクルマなのだから、日本のように自分の欲しいクルマのサンプルとしての試乗とは、意識もずいぶん異なるものと考えられる。
オートモールと呼ばれる新車ディーラーの集まった地域でのディーラー試乗を見ていると、在庫車を思い切りアクセルベタ踏みで試乗するなどしている光景をよく目にする。展示してあるので、ポップなども貼ってあるのだが、そのポップを貼ったまま試乗している。同じディーラー試乗でも、その目的が大きく違うように見えるのはじつに興味深く、お国柄の違いというものも強く感じてしまう。