ネットでポチれば「10リッター1000馬力エンジン」が誰でも買える! 通販天国アメリカのぶっとんだ売り方と怪物エンジンの使い道 (2/2ページ)

1000馬力超のV8が通販されてるクルマ天国のアメリカ

 そんなシボレーが満を持してリリースしたのがZZ632、ネーミング通り632ci(10.36リッター)で1004馬力/6600rpm、121kg-m/5600rpmとハイパーEVあっち行けってくらいのパフォーマンス。もちろん、レースを前提として開発されているものですが、シボレーはストリートでも法規がクリアできるエリアであれば使用可能(牽引車)としています。

シボレーパフォーマンスが販売しているクレートエンジン「ZZ632」

 ピークパワーは6600rpmで発揮して、許容回転は7000rpm、また4000rpmで600馬力、5000rpmでも800馬力といいますから、エルカミやベルエアなんかに積んだら痛快を通り越して、文字どおりボンネット突き破りそう(笑)。

 とはいえ、技術的なバックボーンは素晴らしいもので、たとえば新設計のRS-Xと呼ばれるシリンダーヘッドはガチなレース用ヘッド「Pro Stock」を進化させた優れモノ。バルブ角度をIn:12°、Ex:8.5°に変更し、バルブサイズを拡大、そしてセンタープラグ化することで気流の最適化を実現しています。

 設計はシボレーのレース部門で名を馳せたロン・スペリーで、ストックカーレースでシボレー躍進の立役者といわれています。スペリー氏によると「シリンダーヘッドの燃焼室は非常に小さいため、高圧縮が可能となっています。また、フラットなピストンを採用することで、燃焼効率の向上を実現したほか、プロストック用よりも小さなバルブを用いることで空気の流量、スピードも上げることができました」とのこと。

クレートエンジン「ZZ632」のRS-Xシリンダーヘッド

 むろん、ZZ632はヘッドだけでなくハイパワーと耐久性を確保するために、さまざまなチューンが施されています。スポーツマン・ボウタイ・ブロックと呼ばれる鋳造ブロックをはじめ、同じく鍛造のクランクシャフト、コネクティングロッド、そしてアルミ鍛造ピストンといったハイエンドパーツが目白押し。また、電装系もコイルニアイグニッションシステム、クランクトリガー点火システムなど手抜かりのないもので、大排気量OHVとしては高回転型といえるZZ632を高度に制御しているといえるでしょう。

 2022年のSEMAショーでデビューを飾り、メディアから大絶賛をうけたZZ632ですが、やはり欠点を指摘する報道もありました。すなわち、370万ドル(およそ550万円)というプライスタグはZZ572と比べても段違いに高価で「待ち望んでいたユーザーは財布にも1000馬力が必要だ」といった評価。それでも、572ユーザーであれば632へのスワップは特段の苦労はないのかと。というのも、632のブロックは金型を572と共有(ボア×ストロークに差異があります)しているため、マウントや補機の組付けも楽ちん!

2022年のSEMAショーに展示されたクレートエンジン「ZZ632」

 なるほど、こういう報道があるたびに「よっしゃ!インパラに積んだ572を下取りに出して、632ゲットしちゃる!」というアメリカ人がじゃんじゃんポチるのでしょう。ほんと、アメリカってクルマ好きには天国に違いありませんね。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
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DJ(DJ Bassy名義で活動中)/バイク(コースデビューしてコケまくり)
好きな有名人
マルチェロ・マストロヤンニ/ジャコ・パストリアス/岩城滉一

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