ドリフト車両開発のポイントコントロール性
──あとフロントタイヤが「鬼キャン」で、前から見たら「ハの字」の状態なんですが、あれもドリフト特有のセッティングですよね?
渡部:ドリフトではフロントは「逃す」というか「転がす」といったイメージなので特有ですよね。
──なるほど。ところで、フォーミュラ・ドリフト・ジャパンの車両規定は全日本ダートトライアル選手権のD車両と同じくらい改造範囲が広いとのことでしたが、ボディの材質変更は行なっているんでしょうか?
渡部:GRカローラに関してはドアもボンネットも純正ですね。カーボンにしたり、ウインドウなんかもアクリルにしてもいいけれど、そこまで軽量化しなくても戦えそうだったので材質置換はしていません。
──ちなみにキャロッセとしては、いつからドリフト競技をやっているんでしょうか?
渡部:4年前です。これまでにGRスープラ、GRヤリス、GR86を作って、今年はGRカローラを開発しました。最初はドリフトのクルマはどのように作ればいいのか、わからない状態でしたが、4年目になってようやく上位争いに絡めるようになりました。
──GRカローラはドリフト競技のベース車両に向いていますか?
渡部:GRヤリスとプラットフォームが近いですからね。我々としてはその経験を活かすことができたので作りやすかったという部分はありますし、GRヤリスよりは重量が重いですけど、ホイールベースが短いのでコントロールはしやすいと思います。GRスープラは意外とホイールベースが短いので、コースにもよりますが、セッティングが難しい傾向にありますね。
──キャロッセとしては、ラリーにしても、レースにしてもタイムを争う競技で豊富な経験を持っていますが、ドリフト競技は審査で優劣を決める競技ですよね。車両開発のポイントはどこに置いているんでしょうか?
渡部:やっぱりコントロール性ですね。ドライバーの好みに合わせることが重要だと思います。
以上、簡単にポイントを解説してもらったが、ドリフト競技車両はなかなかに奥が深い。
ちなみに、フォーミュラ・ドリフト・ジャパンでは、マシントラブルや接触でのアクシデントでマシンを破損した場合、5分間のリペアタイムが設けられており、その時間内にマシンを修復することができれば出走可能となるが、キャロッセではその5分間ルールに対応すべく、リヤデフ、ドライブシャフト、アーム類などを予めセットとして組み込み、アッセンブリーで交換できるシステムを採用。まさにル・マン24時間レースで各ワークスチームが採用したリペアシステムと同じ発想で、その作業を実践すべく、WRCやAPRCで戦ってきたメカニックを起用していることも同チームの特徴と言える。
参戦から4年目にして、すでにフォーミュラ・ドリフト・ジャパンにおいても名門チームとなったキャロッセ。同チームが開発したGRカローラがロバンペラの飛躍を支えていたのである。