古臭そうだけどキャブの魅力はどこにあるの?
キャブレターはいつくらいに消えていった?
このキャブレター、だいたいですが、1990〜2000年くらいまで一部の商用車が採用し続けていたようですが、いまではほぼ絶滅状態と言って良いでしょう。残念です。全盛期となると1950〜1970年代でしょうか。1970年代になるとキャブレターとしては成熟が進んで、ほぼ決定版と言える構造に落ち着いていました(オートバイの世界では、1990年初頭まで開発が続けられます)。
その後、1973年に施行された“排ガス規制”に対応させるためにさまざまな対応デバイスが装着されますが、キャブレターでは性能と排気ガス対策の両立が困難で、乗用車向けとしては1980年の後半までにほぼインジェクションに切り替わっていってしまいました。残念です(2回目)。
それでも、コスト面や、ECUなどの周辺装備が不要な点などがメリットとされる商用車に細々と採用され続けていましたが、先に書いたように2010年くらいにはそれもインジェクションに淘汰されてしまったようです。
ちなみに、世界一売ったバイクとして有名な「ホンダ・スーパーカブ」は、2007年にインジェクションに切り替わりましたが、それまではキャブレターでリッター30キロ以上の超省燃費を実現していました。キャブも捨てたもんではありません。
キャブレターに惚れ込む人がいる? その魅力とは?
時代の流れに淘汰されてしまった「キャブレター」ですが、いまでも一部のマニア層には根強い支持を受けています。曰く、「やっぱりキャブの音が最高なんだよなー」、曰く「自分でいじれるキャブ最高!」といった意見を、旧車ミーティングやオーナーズクラブのオフ会などでちょくちょく耳にします。
筆者も音がいいという意見の賛同者のひとりですが、だいたい同じ仕様のエンジンに付いた同じ口径のキャブレターとインジェクション(※どちらも吸気音がダイレクトなエアクリーナーレス仕様です)で乗り比べてみたところ、なぜかキャブレター車のほうが音が“響く”んです。言葉にするのは難しいのですが、音がハッキリしてとおりがいい印象に加えて、いい意味でノイズが多いというか、複雑な感じがします。日常使いでも「なんか気持ちいい」という感じです。
じつは気になっていていろんな専門家に聞いてみたことがあるんですが、燃料を吸い出すキャブと噴射するインジェクションの違いだとか、複数空いた穴が鳴っているのではないか? などの意見が出ましたが、論理的な決定的解説には至っていないようなんです。少なくとも自分が耳にした範囲では「インジェクションのほうが音がいい」という意見はありませんでした。不思議です。
キャブレターに興味が涌いた人に向けて……
2023年現在、キャブレターを採用するクルマはもとより、部品としてキャブレターを製造するのも難しくなってきているという状況になっているようです。残念です(3回目)。
しかし、旧車は当然として、ドリフトや走行会など競技志向の人たちの間で、新たにインジェクション仕様のエンジンをキャブレター化して楽しむ人たちもポツポツ増えているという話を聞きます。その理由となっているのが、「ただ速く走るだけでなく、気持ちよく走りたい!」という欲求のようです。キャブの音が気持ちいいという前の項の話と繋がりますね。それに加えて、「自分の遊びグルマは自分でいじりたい」というスタイルにベストマッチした結果のようです。
純正部品としてのキャブレターは、部品の調達も今後は難しくなっていくでしょう。しかし、競技向けのキャブレターはまだ新品で入手が可能です。2輪用がほとんどですが、アダプターなどを使って4輪のエンジンにも装着が可能です。エンジン特性に合わせるセッティングパーツも豊富にあるので、実用の問題はありません。ただし、高年式車にキャブレターを装着する場合は、点火の制御や車検の問題などでハードルは高いと思いますので覚悟して挑んでください。
この記事でキャブレターに興味が涌いてくれた人は、試しに動画配信サービスなどでキャブの音を聴いてみてください。そして生の吸気音はその何倍も魅力的なので、心が打たれること請け合いです。