クラッシュの際もスムースな救出作業でラリーを支えるオフィシャル
午後の第二部は宗像ユリックス・プレイ広場へ移動し、実技講習を開催。ここではトヨタカローラ福岡のサービス技術グループのメカニックが、市販のハイブリッド車両を使用してハイブリッドシステムの停止の手順を説明するとともに、宗像地区消防本部のレスキュー隊員が普通車を使用したレスキューを実演した。
しかも、ユニークだったのが、多重クラッシュを想定したことで、停止中の前方の車両に追突し、そのまま乗り上げた車両から負傷した乗員をレスキューする方法をレクチャー。事故車両の固定の仕方や乗員へのアクセスの仕方、乗員の搬出方法などをケースごとに実践・検証していた。
さらに、宗像地区消防本部のアドバイスのもと、ラリージャパンに参加するオフィシャルも実車を使用したレスキュー訓練を実施。競技車両ではなく、市販のハイブリッド車両だったが、負傷した乗員へのアクセスルートを確保するために、特殊なツールを使った各ウインドウの破損やフェンダーやドア、ピラーの切断などを実践していた。
同時に宗像地区消防本部の救急救命士、吉田恵助氏がRally1カーの乗員救助のポイントとしてシートやグローブなどを使用した高電圧の絶縁方法や手順などを解説していた。
このラリージャパンを想定したレスキュー訓練は2022年にも行われたほか、2020年のセントラル・ラリー愛知・岐阜の会場でも大会前日に実施されるなどたびたび行われていることから、オフィシャルのスキルは高く、それを宗像地区消防本部のレスキュー隊員たちも高く評価。事実、2022年の大会では前述のとおり、新井がSS1でクラッシュを喫したが、トレーニングの積み重ねにより、真っ暗な現場でもスムースな救出が行えたのである。
ちなみに、前述のとおり、2022年の大会ではソルドのドライブしていたヒョンデ i20N Rally1ハイブリッドが炎上したことから、オフィシャルたちは2トン以上の水をかけて消化を行った。それでも一度バッテリーから出火してしまうと鎮火は難しいようで、Rally1ハイブリッド車両の炎上に対しては、現時点では乗員を救出したうえで、山火事を防ぐべく、いかに延焼させないかがポイントになっているのである。
なお、Rally1ハイブリッドにはフロントとボディの両サイドに「HVセーフティ・ライト」が設置されており、正常時は緑、漏電やコネクター・ショート不良などの異常時は赤、衝突時は青のランプが点灯。海外のWRCではクラッシュ時にギャラリーがクルマを押し出しているシーンがたびたび見られるが、Rally1ハイブリッドではHVセーフティ・ライトが赤および青、さらにランプが消灯していないときは感電のリスクがあることから、観戦する際は注意しておきたいものだ。