この記事をまとめると
■レクサスのラインアップを一堂に揃えた試乗会「レクサスショーケース」に中谷明彦が参加
■日本導入が予定されている超高級ミニバンのLMに試乗
■LM以外にもLBX、TX、RZの3モデルに富士スピードウェイのショートコースで試乗した
ミニバンの王様は乗り心地も走りも大満足
2019年よりレクサスは中国市場向けにミニバン「LM」を設定し発売していた。それが今回、国内にも導入されることとなり、試乗することができた。
中国では長くセダンの人気が高く、それも後席重視モデルの人気がとりわけ高い。そのため、欧米の多くのメーカーは、中国市場向けにロングホイールベースモデルを設定。後席の快適性を高めてニーズを獲得してきた。しかし近年、訪日中国人旅行者を中心に、トヨタ・アルファード/ヴェルファイアの室内の広さと快適さが注目され、富裕層はアルファード/ヴェルファイアを手に入れることをステータスとするのがトレンド。そんなミニバンブームを察知したレクサスが、中国市場向けにLMを設定。瞬く間に富の象徴として富裕層の支持を獲得した。当然、日本のユーザーもLMの存在を知り、それを渇望する状況となっていた。そんななかでアルファード/ヴェルファイアがフルモデルチェンジを受けたのを好機とし、国内向けLMが登場したというわけだ。
LMは、アルファード/ヴェルファイアと基本的なプラットフォームを共有している。新設計となったGA-Kプラットフォームにより、車体の捻り剛性は従来比で1.5倍強化された。車体寸法は全長5125mm、全幅1890mm、全高1955mmで、ホイールベースは3000mmだ。外観の意匠差でアルファード/ヴェルファイアより若干外寸は大きくなっているが、ホイールベースは共通している。
エクステリアを見ると、レクサスの新しい顔といえるグリルが斬新だ。従来のレクサス車の顔として親しまれてきた「スピンドルグリル」をぶっ壊せ、という豊田章男会長からの指示を受け、デザイナー陣が新しい顔を創出したのだという。
LM500hというグレード名から、2.4リッターターボエンジンにe-Axleを組み合わせたDIRECT4のAWDモデルであることがうかがえる。当日はスペックなどが明かされず、推測での話となるが、アルファード/ヴェルファイアには設定のないハイパワーHVシステム搭載車であることは間違いなさそうだ。
通常なら運転席に乗り込んで走りだす場面だが、LMの場合は最初に後席を確認してみたくなる。電動スライドドアを開けると、飛行機のファーストクラスを思わせる豪華な室内に目を奪われた。運転席・助手席の前席とは分厚いバルクヘッド(隔壁)で隔てられ、前席シートも十分リクライニングさせられるようBピラーより若干後方寄りに配置されている。本来ならBピラーを太くしてEXTENDボディとしても良さそうだが、そうなると全長は5mを大幅に超えてしまっただろう。
隔壁には48インチという超大型のワイドディスプレイモニターが配され、さまざまなインフォテイメントやインターネット、TVや映画鑑賞なども可能。オンライン会議などもでき、移動するオフィスとしての機能を最大限に高めている。
隔壁上部には電動で上下するウインドウが備わり、全閉にすれば後席空間は完全に密閉され、会話音などが前席に漏れないほどの密閉性が得られる。
後席は2座備わり、前後にはスライドしない固定位置式だ。左右も座席は一体に連結しているが、個別にフルリクライニングする。そう、このLMは4人乗りという贅沢な仕様となっているのである。
後席の後ろ側は荷物積載スペースとなっており、大型セダンに劣らぬ荷室スペースが確保されている。
前席に移動して走らせてみる。まず静粛性は当然ながら極めて高い。アルファード/ヴェルファイアに採用された静粛性向上アイテムに加え、さらに吸音材や構造用接着剤の特性変更、レーザー溶接の範囲拡大など多岐に渡るチューニングを施している。
ハンドリングはコーナーでのロールが少なく、ステアリングのトレース性が高い。車体前方やリヤアクスル周辺に補強アイテムを追加設定し、ハンドリングの剛性感を高めつつ質感も向上させている。19インチのミシュランタイヤを奢っているのもレクサスならではの選択だろう。
ショックアブソーバーは周波数応答型としているが、独自のチューニングを施してあるという。
フラットで快適な室内、そしてドライバーは安定感のあるハンドリングに満足できる。全席で満足感の高い走りと装備がLMの魅力なのだ。ただし、価格は相応に高くなるはずで、購買層は限られてくるだろう。