審査や購入条件があるなどトヨタでも特別なクルマ
一般的に新型車が追加されながら別の車名を与えない場合、従来型の廃止を前提にしていることがある。あくまでも邪推だが、セダンタイプの従来型センチュリーを廃止して、新しいSUVタイプに統合する可能性もあるのではないか。
セダンタイプの従来型センチュリーは、2018年に1カ月の販売目標を50台に設定して発売されたが、実際の売れ行きはもっとも多い2019年でも1カ月平均が32台だった。2020年はコロナ禍の影響もあって1か月平均が12台に下がり、2021年は5台、2022年も13台だ。販売目標を大幅に下まわった。
この販売実績を見ると、セダンタイプを廃止してSUVタイプに統合する邪推も現実味を帯びるが、簡単には廃止できない。販売台数が極端に少ない状態で車種を廃止すると、開発や生産設備の投資を回収できず、単純にいえば赤字の商品になるからだ。したがって、センチュリーのセダンタイプは収支のバランスが取れる一定の台数に達するまで、今後も売り続けるだろう。
新型センチュリーでは販売方法も気になる。月販基準台数は30台で、従来のセダンタイプよりも少ない。発売当初は、需要が生産規模を大幅に上まわることが考えられる。そこでどのような売り方をするのか販売店に尋ねると、販売会社によって返答が違った。あくまでも問い合わせた範囲だが、以下のような話が聞かれた。
「センチュリーはリースのみで、ウェブサイトで申し込んだあと、お客さまの審査を行う。その上で専門のセンチュリーマイスターと面談する。審査の結果次第では、面談まで進めない場合もある。審査の基準は公表していない。また面談に進んでも、購入できない場合があり得る」。
「弊社(該当する販売会社)ではリースではなく販売しているが、現時点でセンチュリーを所有しているお客さまに限らさせていただく。過去にセンチュリーを所有した経験があっても、現時点で所有していないと販売の対象外になる」。
「販売しているが、いままでに弊社から、20台以上を購入されたお客さまのみになる。したがって、必然的に法人のお客様に限られる」。
気になったのは「ウェブサイトで申し込んだあと、お客さまの審査を行う」という返答だ。ウェブサイトを使うと気軽に申し込めてしまう。販売台数が限られるなら、販売店に出向いて申し込みを行うべきだ。そうなれば自ずから真剣に買いたいユーザーに絞られる。販売会社によっては「いろいろなお客さまがおられるので、ウェブサイトの申し込みは行わない」という返答も聞かれた。
「お客さまの審査を行う」のも異例だ。センチュリーの購買層には、2500万円を即座に振り込める人も多いだろう。盗難を防げる車庫の完備など、所有が可能か否かを十分に検討してから申し込みをするに違いない。そのような顧客に「ご要望に沿えませんでした」と入社試験に落ちたような返答をしたら、どのような気持ちになるだろうか。この点はセールススタッフも困惑している様子で「購入を断わられたお客さまは心証を害されるでしょうね」と述べた。抽選の方が、まだマシかも知れない。
センチュリーは特殊な高価格車だが、トヨタ車の代表でもある。ほかのトヨタ車と同じように、誰でも公平に、気持ち良く買える商品であって欲しい。