「おとぼけフェイス」からは想像できない悪路無双っぷり! スカンジナビアンデザインなんてどこ吹く風感のある「ボルボC303」の実力がヤバい (2/2ページ)

高い最低地上高と幅狭ボディで狭い悪路もガンガン進む

 たとえば、エンジン。一般的に軍用車、しかも多目的車両となると信頼性や整備性、あるいは燃料の入手性などからディーゼルが選ばれる傾向にあります。が、ボルボは一貫してガソリンエンジンにこだわり、それは先代モデルのC202時代から変わらず引き継がれているのです。

 理由としてはいろいろあるようですが、自社製ガソリンエンジンに相当な自信をもっていたことが一番ではないかと。鋳鉄ブロックを使ったボルボのエンジンは、いずれも耐久性や整備性のよさは折り紙つき。昔の市販車など「10万、20万キロは慣らし運転」と称賛されたほどです。

 しかも、C303に搭載されたのは市販車にも採用されたB30という直6エンジン! 4気筒エンジンに比べて重量面ではハンデがあるものの、より堅固な作りでクルマどころか船舶や産業機械にまで使われる傑作エンジンです。C303の走行を見た人によれば「エンジン音がとても静かで、ロールスロイス製かと思った」とのこと。ヘビーデューティ車=ディーゼルのガチャガチャ音というイメージ、C303では通用しないのです。

 妙に高い車高もボルボがこだわったポータルアクスルを用いた成果です。これは、アクセルシャフトがホイールセンターから(主に上部へ)オフセットされた構造で、ハブキャリア内のギヤでもってタイヤを駆動する構造。オフセットされた分だけ最低地上高が稼げるわけですが、ギヤを介する分だけトルクが下がる、ハブの重量増しといったネガもないわけではありません。クルマでの採用例はさほど多くはありませんが、鉄道やバスではわりとよく目にする機構かと。

 また、C303は最低地上高を稼いだうえにトレッドも狭く設計されているため、狭い悪路をものともせずに走れる利点もあります。全長4.4メートルに対し、車幅は1.9メートル、ホイールベース2.3メートルと、これは一般的な安定性を優先したジオメトリーというより、コンパクトな機動性が求められたということでしょう。

 なお、C304は4×4の全輪駆動モデルですが、6×6のC304という大型モデルも派生しています。走破性や、より大型なボディの架装を目指したもので、軍隊では兵員輸送、消防隊ではより大きなタンクやポンプの搭載が可能となっています。

 ルックスと違って実力派だったC303ですが、1979年にはボルボ・ワークスチームによってパリ・ダカールラリーに参戦し、10トン以下トラッククラスで見事優勝を遂げています。イエティボリのボルボ博物館に飾られた実車には「Cross Country」なるお気楽そうなステッカーが貼られていますが、C303のスタイリングにはいささかミスマッチな気もします(笑)。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

文筆業

愛車
三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
趣味
DJ(DJ Bassy名義で活動中)/バイク(コースデビューしてコケまくり)
好きな有名人
マルチェロ・マストロヤンニ/ジャコ・パストリアス/岩城滉一

新着情報