丘を飛び越えた先で大事故発生!?
案の定、初日のレグ1は、ミスコースでCP(チェックポイント)不通過に終わっていました。その悔しさを抱えて迎えたレグ2は難関の砂丘越え。スタートから早々にスタックしてしまい、スコップを担いでせっせと砂掘りをするのですが、容赦なく照りつける太陽で全身がクラクラし、精神的にもかなりキツイ作業です。
ようやくスタックから抜け出したときには、もう前方のマシンたちに追いつきたい一心でした。頭のなかで、ラリー経験者から教わった砂丘の走り方を復習しつつ、小さなコブをひとつ越えました。同時に次のラインを探すと、右に通過しやすそうなコブがあったのですが、こともあろうに中腹あたりで他のマシンがスタックして道をふさいでいます。
左はどうかと見ると、ちょっと高い、いや、かなり高い! 5m以上はあるかもしれない。リスキーか? でもここで止まったら、またスコップ担いで砂掘りになってしまう……。行くしかない! 私はアクセルを踏み込んだのです。
次の瞬間、私は宙を舞っていました。「あ!」と叫んだ直後、マシンは強い衝撃とともに地面に叩き付けられ、何度かバウンドしながらも転覆はまぬがれ、止まりました。フロントガラスが小さなクモの巣状にひび割れている現実に、悲鳴どころか声も出ないショック状態。
しばらくしてようやく横を向くと、ナビゲーターは顔が血まみれでギョッとしました。助手席の前に取り付けられていたラリーコンピューターに顎を打ち付けたらしいのです。恐る恐る外に出てみると、マシンはフロントマスクがぐにゃりと潰れていて、リヤはテールランプが砕け散り、バルブが垂れ下がり、バンパーはもげて転がっているではないですか。そしてハッと気づいて、まわれ右をして、いま超えてきた砂丘の裏側を見たのです。私は全身から血の気が引き、呆然と立ち尽くしました。
「なんじゃこりゃ!」
なんと、砂丘の裏側には「何もなかった」のです。こんもりした山に見せかけて、裏側は砂が見事にえぐれている、まるでスキーのジャンプ台のようだったのです。常識を超越した自然現象を目の前にして、ただただ鳥肌が立つばかりの私でした。
じつは砂丘ドライビングにおいて、これがもっとも怖い現象のひとつだと聞いたのは後になってからのこと。「先に教えといてよ〜」とは思ったのですが、あのとき、私のマシンの轍をトレースして、他チームが続いて来なくて本当によかったと思っています。ナビゲーターの怪我も大事には至らず、絆創膏を貼ってことなきを得たのも不幸中の幸い。
こうして主催者のなかでは、大惨事と紙一重のところで、「日本人アキコの大ジャンプ」として笑い話になっていました。この悪運の強さには、感謝すべき……なのでしょうね。次に砂丘を走ることがあったら、いや、ないとは思いますが、「行っちゃえ〜」という度胸は少し封印して走りたいと思います。