先進安全装備は使いこなせればそもそも意味がない
また、あるメーカー系ディーラーでは75歳以上のお客がひとりで新車の契約を結んだ場合は、近親者へ本当に本人の確かな意思で購入したかの確認をとるそうだ。以前、認知症を患い徘徊クセのある高齢者がショールームを訪れ新車契約を結びそのまま手続きを進めているなか、近親者がそれを知り大問題となったことを受けての措置のようである。
トラブルを防ぐ意味から、長い間家族ぐるみの付き合いで問題がないとわかっても、確認は必ず取るようにしているそうだ。
また、いくら高齢ユーザーがきちんと運転できるとしても、昨今の安全運転デバイスをはじめ、先進装備に追いつけないという現実もあるようだ。もちろん、そのような先進装備をしっかり理解して使いこなせる高齢ユーザーもいるが、全員ではないのも事実。「都市伝説で聞いた話ですが、あえて納車時にカットできるデバイスはすべてオフにして納車したということもあるようです(事情通)」。いまは絶版となったが、日産マーチの最終モデルが長いことラインアップされていたのも、高齢ユーザーを意識してのものとの話を聞いたこともある。
スマホと同じで、世代が入れかわれば、高齢ユーザーでもデバイスの増えたクルマを無理なく運転できるようになるだろうが、いまはちょうどその過渡期にさしかかっているのである。
いずれにしろ、いまの新車ディーラーを覗くと意外なほど店内にいるお客は年配の人が多い。点検での訪店では、作業内容の説明に四苦八苦しているメカニックの姿を見ることもある。いまの少子高齢化が飛躍的に改善されることはないので、この風景は当分続くことになるだろう。