眉唾っぽい逸話溢れる自動車メーカーエンブレムの由来! とくに気になる5つのメーカーの真相を探った (2/2ページ)

黒文字への変更は自分で自分を哀悼した!?

ロールスロイスとロータス

 2社いっぺんに取り上げたのは、両社ともにある時期をもってエンブレムの色を黒に変更している、という共通点があるからです。

 まず、ロールスロイスはチャールズ・ロールスとヘンリー・ロイス、ふたりのイニシャルであるRがふたつ重なるロゴが有名です。当初、七宝焼きのエンブレムで使われた文字色は赤でしたが、1933年に黒へと変更されました。

 この理由は、長らく「1933年はヘンリー・ロイスが逝去した年ゆえ、哀悼の念を表した」と考えられてきましたが、これ、どうやら都市伝説だった模様(笑)。実際には、黒い文字色であればボディカラーを選ぶことなく似合うはず、というマーケティング戦略が理由であり、当のヘンリー・ロイスも亡くなる1カ月前に稟議書にサインをしているという始末。まさか、自分への哀悼に許可を出すわけありませんよね。

 一方のロータスは、いわゆる蓮の葉(ロータス)の色が当初のクリーム色とグリーンから、黒字にシルバーの文字へと変更された期間がありました。これまた、コーリン・チャップマンがチーム・ロータスF1のエースドライバー、ジム・クラークの事故死に対する哀悼の念を表したもの。ロールスと違ってこちらはガチでして、わずか1カ月の生産分しか変更されなかったため、希少価値も抜群! それゆえ、後付けエンブレムが出まわり、黒に付け替えるオーナーも数えきれなかったとか。

マセラティ

 ボローニャにある海神ネプチューンが持つ三叉の槍がモチーフになっていることはご承知のとおり。この槍が楕円のなかにレイアウトされる以前、1920年代は長方形のプレートに槍が描かれていました。ところが、レーシングカーが進化するにつれて長方形のエンブレムは使い勝手が悪くなったのだそうです。つまり、フロントグリルが湾曲するとか、ノーズのデザインに長方形が似合わなくなったということ。グランプリマシンの場合は四角い部分を省いて、グリルに槍の金型だけを貼り付けて事なきを得ていたようですが、さて市販車はどうするか、マセラティ・ファミリーは頭をひねりました。

 そこで、トライデントのデザインを考案したファミリーの五男坊、マリオが「シャシーチューブの楕円形でどうよ!」と再び閃いたのだそうです。当時の一般的な鋼管フレームは丸パイプを用いていたのですが、マセラティはこれを楕円形状とすることで剛性や軽量化を実現し、数々の栄光を手にしたのです。

 以降、この楕円モチーフは途切れることなく使われていること、ご存じのとおりです。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
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