「ノアヴォク」も「アルヴェル」も「ハリアー」からも消滅! 車種別「エンブレム」廃止の裏にみえるトヨタの壮大な決意

この記事をまとめると

■トヨタのモデル別エンブレムが消えトヨタエンブレムに変わりつつある

■トヨタエンブレムへの統一はトヨタの「未来に向かって変わろう」という意思表示だ

■トヨタが変わっていくことを明確に示す企業姿勢の「見える化」とも言える

オールトヨタでモビリティカンパニーを目指すという意思表示

 トヨタはモデル別のエンブレムがあった。それが近年、トヨタエンブレムに変わってきている。背景には、「クルマの未来を変えていこう」という、トヨタが目指す次世代事業戦略が見え隠れする。

「ノア」、「ヴォクシー」、「アルファード」、「ヴェルファイア」、「ハリアー」など、トヨタのモデルのなかにはモデル別のエンブレムが存在した。そうしたエンブレムに慣れ親しんだユーザーも少なくないだろう。

 エンブレムは、クルマのフロント中央部に位置するため、まさにそのクルマの顔である。そんな顔を変えたというのだが、トヨタとしてはかなり大きな決断だと言えるかもしれない。こうしたトヨタ車における、トヨタエンブレムでの統一の背景には、自動車産業界がおかれている大きな時代変化があると言えるだろう。

 たとえば、技術面で見てみる。2010年代半ば以降、CASEが重要視されるようになった。通信によるコネクテッド、自動運転技術、シェアリングなどの新しいサービス、そしてBEV(電気自動車)に代表されるような電動化を指す。

 なかでもBEVについては、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を用いた「マルチパスウェイプラットフォーム」と、「bZ4X」を筆頭に展開するe-TNGA、さらに2020年代後半での量産に向けて研究開発が進む次世代BEVなど、トヨタのモデルラインアップの基盤が大きく変わる時期でもある。そうしたCASEによって、トヨタはクルマからモビリティへの進化が必須とあり、モビリティカンパニーへの転換を目指しているところだ。

 つまり、量産モデルの集合体というクルマのカンパニーから、オールトヨタでモビリティカンパニーを目指すことであり、エンブレム統一はそうしたトヨタの「未来に向かって変わろう」という意思表示だと言えるのではないだろうか。

 地域社会との関係という観点もある。公共交通などでIT技術を駆使するMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)という考え方も、日本を含めてグローバルで導入されるようになった。

 日本では、全国各地のトヨタ販売店を起点に「まち一番のトヨタ」という切り口で、地域社会におけるトヨタとしての役割を再確認しているところだ。また、これまで多様な販売網を敷いてきた営業体系を改め、地域によっては販売チャネルの統合を伴う、全店舗での全車種販売へとトヨタは大きく舵を取った。

 さらに言えば、東京オリンピックパラリンピックでは「モビリティ・フォー・オール」というトヨタとしての社会に向けた信念を示し、さまざまな環境においてユーザーと真正面から接することを宣言した。

 このように、トヨタ車のトヨタエンブレム化は、単なるマーケティング手法としてではなく、大きな時代変化のなかでさまざまな視点でトヨタが変わっていくことを明確に示す、トヨタの企業姿勢の見える化だと思う。


桃田健史 MOMOTA KENJI

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