使わないときは降ろしちゃえば便利なのになぜ? 日本に「シートが外せる」ミニバンがない理由 (2/2ページ)

ホンダ・ラグレイトやメルセデス・ベンツVクラスはシートが外せる

 が、ちょっと待てよ、かつてあったホンダのミニバン、ラグレイトは3列目席ではなく、2列目席がデタッチャブルシートと呼ばれる脱着可能なシートとなっていた。

①リクライニングレバーを引き、シートバックを前に倒す。
②シート脚部外側下のロックを解除してシート後ろ側を浮かせ、シート前側のツメをフックから外す。
③そのまま後ろにスライドさせ、シートを外す。

 という手順で2列目席が外れ(かなり重いが)、さらに3列目席を床下収納すれば、1列目席だけの、まるで商用ワンボックスに匹敵する大きなラゲッジスペースが出現するというわけだ。そんなことができたのは、ラグレイトがホンダ・オブ・アメリカのカナダ製ミニバン、つまり日本とは車検制度が異なる海外からの逆輸入車だったからだろう。

 よって、現在でも、シートが外せるミニバンは、輸入車に限って存在する。たとえば、超大容量ラゲッジルームの創出という点では、メルセデスベンツVクラスだ。何しろ豪華な2/3列目席をそっくり取り外すことができ、引っ越しができるほどのラゲッジルームが出現させられるのだ。もっとも、豪華なシートだけに1脚の重量はかなりあり、一人で運ぶのは難儀。もちろん、置いておく場所にもそれなりのスペースが必要になる。

 家族と大きな荷物を詰め込んで遠路、バケイションに出かけるのが好きなアメリカ人向けにも、シートが取り外せるミニバンがあった。それがクライスラー・ボイジャーで、セパレートシートの2列目席とベンチシートの3列目席を取り外すことができ、さまざまなシートバリエーション、室内空間のアレンジが可能だった。

 ラグレイト、ボイジャーはもはや新車で手に入れることはできない。Vクラスは高価だし大きすぎる……しかしシートを”合法的に”取り外せ、大容量のラゲッジスペースが手に入るクルマが欲しい……というなら、3列目席の脱着を前提に開発されたシトロエン・ベルランゴ、兄弟車のプジョー・リフターの3列シート仕様となるロング版がある。

 どちらも3列目席を簡単に取り外すことができ、その際のラゲッジ容量は最大2693リットル、最大奥行は約2200mmに達するほど。3列目席を取り外すことで大容量のラゲッジルームが手に入り、なおかつオシャレで走りが良く、扱いやすさ、使い勝手に優れる選択としては、この2台(ロング)が現在の現実的かつほぼ唯一の選択となるだろう。独創的なデザインで選ぶならベルランゴ。クロスオーバーテイストで選ぶならリフターで、こちらのほうがアウトドアに一段と似合うはずである。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

新着情報