過酷なステージを難なくこなすトライトンの実力
今回、走行ステージとなる「十勝アドベンリャー・トレイル」は、三菱自動車の十勝研究所のすぐ隣に位置し、これまでもパジェロやデリカD:5など、同社のRVで悪路走行体験やグランピングを楽しめる場所として活用されてきた。かつてパジェロのラリー仕様車でパリ・ダカールラリーで日本人初の総合優勝を果たした三菱自動車の増岡 浩氏がコースを設定。本格的なオフロード車の走行テストも行なわれる過酷なステージもある。
トライトンの走破性を試す場所としては格好のステージといえるわけだ。
車両に乗り込みコースイン。100%未舗装路で構成され、初めのコーナーからして難易度が高い。まず細い林道をハイスピードで抜け、大きなうねり路を進む。車体が右、左と捻られるがキシミ音ひとつせず、高いシャシー剛性を感じることができる。
次に約30度のキャンバー路。ひっくり返りそうなほどの傾斜で進むが、安定感は突出している。じつは同コースをアウトランダーPHEVやデリカD:5、デリカミニでも走るのだが、いずれの車両も難なくクリアできてしまった。こんな悪路試験を常に見据えた車両開発を行なっているからこそ三菱車らしいDNAが引継がれている、といえるのだろう。
続くロック路は大小の石が路面を埋め尽くす。ここでトライトンはもっとも難易度の高い部分を走行できる。左右の操舵輪にキックバック入力が過大に入るが、電動パワーステアリングがそれを抑え、直進に保舵したまま走破できる。
モーグル路は左右に大きな凸凹が設定され、前後の対角上の一輪が同時に浮き上がってしまう場所。普通の車両ならトラクションが失われ走行不能となってしまうが、グラベルモードで十分なブレーキLSDがかかり、前進可能だ。
登り・下り勾配のステージは運転席から前方が目視できないほどの急傾斜だ。こうした状況では前方カメラで事前に路面情報を読み取り、エンジン下の路面状況としてモニターに映し出して安心して進むことができる。近年のオフロードビークルには標準化が進んでいる先進的な機能を装備しているのだ。
圧巻なのは「ダカール坂」と名付けられた斜度約30度の坂道。下り区間はヒルディセントを稼働させ、ゆっくりと確実に降りる。折り返しての登坂では、登り始めると目視できるのは空だけ。先の路面はモニター画面で確認するしかない。しかも路面は泥濘んでいてスリッピーだ。ここを標準装着のダンロップAT25タイヤ(ヘビーデューティなマッドタイヤではない)で一気に駆け上がれてしまうのは、優れたトラクション性能の現れだろう。
いずれの走行シーンでも、室内は静かで快適だ。モダンなデザインと上質な質感のインテリアはシティユースにも十分な満足感が得られる。北米ではピックアップトラックをフォーマルユースでも使用するユーザー層が一定数以上におり、北米メーカーのピックアップトラックにかける情熱は熱い。トライトンはそんなユーザー層も視野にいれているようで、新しい販路の拡大も期待できる。近年のSUVブームから国内でもそうしたニーズが生まれる可能性が高いのだ。
会場にはアウトランダーやデリカD:5、デリカミニも用意され、それぞれ同様に悪路走破性が高いことを再認識させられた。4WDの基本性能と、AWCやS-AWCが悪路でも機能していることを確認することができたのだ。
こうした走りの実力が「三菱らしいクルマ」のベースとなり、ユーザーの「安心と安全」と、さらに「快適さ」にも繋がっているのだと現地に来訪していた三菱自の加藤社長は語る。じつは加藤社長、ドライビングが大好きでテストドライバートレーニングも受けているらしい。当日も会場でハードな走りを堪能していた。新型トライトンでジャンピングスポットを果敢にジャンプする姿を披露しようと機会を狙っていたかのようだった。
そんな加藤社長にパジェロやランサー・エボリューションなど三菱車の走りのDNAに対する熱い想いをお聞きし、今後の三菱自動車が送り出すモデルに期待しないわけにはいかなくなった。