環境云々とか関係なくて「身を守るため」にEVやPHEVに乗るのはアリ! 自然災害の多い日本ならガチで検討すべき選択だった (2/2ページ)

イザというときはPHEVが便利!

 注意すべきは、電気の供給能力としては5日分だとしても、停電時に従来どおりの生活を送ることができるわけではないという点です。

 多くの電動車において車内に装備されているACコンセントの最大電力は1500Wですので、それを超えることはできません。ドライヤーと電子レンジを同時につないで使うのは現実的ではありません。1500Wに迫る消費電力となるホットプレートなどの使用についても注意が必要でしょう。

 さらにいえば、壁に設置されているエアコンについてはコンセントをつなぐこともできません。夏場は扇風機を動かすのが精一杯ですし、冬場は電気毛布で暖を取るというのが現実的になりそうです。

 このようにクルマと家電をダイレクトにつなぐ使い方は「V2L(Vehicle to Load)」といいますが、さらに災害対応での安心感を高めたいのであれば「V2H(Vehicle to Home)」への対応を進めるといいでしょう。

 V2Hを実現するためには50万円以上する専用機器が必要となりますが、高性能モデルであれば200Vにも対応するため、エアコンを含めて日常生活をそのまま送ることが可能となります。

 大きなバッテリーを積んだEVやPHEVなどの外部給電能力を引き出したいのであれば、V2Hの導入は必須といえるでしょう。

 そしてV2Hともっとも相性がいいのはPHEVだと考えます。

 EVの場合は、バッテリーに充電されている電力を使い切ってしまえばジ・エンドですが、PHEVはバッテリー電力+エンジンによる発電のダブルで家庭の電力をバックアップできるからです。バッテリーが電欠したEVは走行不能となりますが、PHEVであれば少しの燃料を残しておけばガソリンスタンドまで移動して、ふたたび満タンにして帰ってくることも可能といえるからです。災害時にガソリンスタンドが機能しているかどうかは議論になるかもしれませんが……。

 前述した一般家庭の1日あたり消費電力10kWhを基準とした場合、国産PHEVの代表的モデルといえる三菱アウトランダーPHEVであれば、約12日分の電力量が供給可能とアナウンスされています。ロータリーエンジンの復活が話題のマツダMX-30 Rotary-EVにおいても、バッテリー+エンジン発電で約9.1日分の電力量を供給できるといいます。ちなみに同じマツダのPHEVであるCX-60 PHEVでもV2Hでの供給能力は約9.1日となっています。

 V2Hは戸建て向けのソリューションというイメージもありますが、集合住宅でもV2H的なバックアップ体制を整える方向で進んでいます。

 先日も、マンション大手デベロッパーの大京と、日本のEVトップランナーである日産自動車、日産プリンス広島販売の3社が「電気自動車を活用した脱炭素化及び強靭化に関する連携協定」を締結したという発表がありました。

 マンションの駐車場に充電機能を整備すると同時に、災害時には大京の社用車や日産プリンス広島が提供するEVによって電力を供給。ギャラリーなど共用スペースにて、スマートフォンの充電、電子レンジの貸出などを行うことで地域の防災拠点となることを目指すというものです。

 現時点では、EVについては企業からの提供となっていますが、マンション駐車場にてEVやPHEVなどのカーシェアリングを展開すれば、わざわざEVを運ばなくてもすぐさま防災拠点となり得る可能性を持つプロジェクトです。

 自動車の電動化が進むなか、災害対策としてV2L機能の搭載については標準的になっていくでしょう。そして、V2H機器を活用した災害対策は戸建て・集合住宅を問わず増えていく未来がやってくるかもしれません。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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