100%ポルトガル製を目指したけど……残念! 涙を呑んで「ダイハツエンジン」を搭載した「サド550」というおもちゃのようなクルマの正体とは (2/2ページ)

2年間で約500台を販売したという

 涙を呑んで世界中からエンジンサプライヤーを募ったところ、ダイハツから28馬力の550ccエンジンを購入する運びとなったのです。

 もっとも、エンジン以外の設計はよくできたもので、試作機と同じシャシーながら4輪化され、エンジンはフロントに搭載し、トランスミッションをリヤに配置するコンパクトなFRパッケージ。10インチの小型ホイールと相まって、ルーフが高い割には重心が低くなり、コーナリング性能は思いのほか良好だったようです。また、乗員がリヤアクスルの真上に近いところに座るため、トラクションのかかりかたも理想的なものとなり、もしもマイクロカーによるラリー競技でもあったら、サド550はチャンピオン候補に挙げられていたに違いありません。

 ほぼフラットな面構成のボディはリスボン工科大によるデザインで、FRPとプレクシグラスを駆使したもの。ちなみにサド550は、モデルライフ中に4回ほどマイナーチェンジが施されており、主にはヒーターや換気性能の向上ですが、フロントウインドウがフラットからいくらか湾曲したものに変わるなど、スタイリングと利便性にも手抜かりはなかったようです。

 1982年、政府の公認といくばくかの後押しを受けて発売されたものの、開発陣が予想していた爆売れにはほど遠いスタートだったとのこと。どうやら、庶民には手が出しづらい価格だったことと、リスボン市内はまだしも、郊外に出かけるにはミニマムサイズ過ぎたことが原因だったそう。

 たしかに、全長×全幅が2365×1345mmという超コンパクトなサイズは、ゴルフ場のカートより小さいわけですからマイクロカー全盛の1960年代ならまだしも、1980年代の道路環境には厳しかったはず。

 それでも、1984年までの2年間で約500台が販売されたと記録されており、噂によればいまだにアントレポストは受注生産しているとか、いないとか。真偽のほどはわかりませんが、オーダーの際はボディカラーを自由に選べたそうですから、日本の道をわりと元気よく走る姿を想像したら、ちょっと頬が緩みそうではあります。

 なお、最近RMサザビーズで落札されたサド550は6900ユーロ(およそ108万円)と、コレクターにとってはリーズナブルなものかと。むしろ、まだオーダーできるならEV仕様のサドというのもアリだと思うのですが、いかがでしょう。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

文筆業

愛車
三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
趣味
DJ(DJ Bassy名義で活動中)/バイク(コースデビューしてコケまくり)
好きな有名人
マルチェロ・マストロヤンニ/ジャコ・パストリアス/岩城滉一

新着情報