この記事をまとめると
■新車は納期遅延から納期がまるで読めない納期混乱の時代に
■1年後2年後の乗り替えを想定して注文していたディーラーもお客も突然納期が早まる問題に直面することも
■あえて納期が延びるオプションを設定して調整するディーラーも出てきた
納期をオプションで調整する手段を取る場合がある
いままでは、ただ納期が延びるだけだったので“納期遅延”と呼んでいたが、最近の新車販売現場の様子を見ていると、契約当初は年単位で納車まで待つような状況だったのに、いきなり半年後に納車になりそうだといったことも目立つので、“納期混乱”と呼んだほうがいいのかもしれない。
事情通いわく、「基本的には人気車ほど納車まで時間を要するという状況に変わりはありません。そのため腰の軽い、つまりフットワークの良いセールススタッフほど、新車を納車したあと、できるだけ速やかに次の新車の注文を入れてもらえるようにしていると聞いています」。納車後1カ月後や半年後の無料点検あたりで、「次の新車をそろそろ注文しましょう」というやり方も珍しくないようだ。現金一括払いならまだいいのだが、いまどきは結構な割合で残価設定ローンを利用して新車を購入している。とくに初回や2回目車検など短期間で乗り換える人ほど残価設定ローンを使っているケースが目立つ。
「納期が予定より早くなるのならうれしいかぎりではないか」と考える人もいるかもしれないが、セールススタッフは残価設定ローンの返済状況も考慮して動いている。つまり、納車まで「2年かかりそうなら、納車のころの残債を下取り査定額で相殺可能だね」などを判断しながら動いているのである。そのなかで、新車納車後半年ほどで次の新車の納車が2年後になる前提で新たに注文を入れたのに、半年後に納車になってしまうと残債が多すぎて下取り査定額で相殺することが不可能になるのである。
「このようなケースになった場合には、すべてのモデルにあてはまるわけではないですが、納期を長引かせるオプションを追加して、引き延ばすということもやられているようです」とは事情通。
たとえばトヨタ・ノア・ハイブリッド車の本稿執筆時点での予定納期は2024年秋以降となっている。しかし、パノラミックビューモニターをオプション選択すると2025年春以降となっている。数カ月しか納期を延長することはできないが、オプションを追加して可能な限り納車を延ばして対策を考えようというわけである。クラウンも選択するオプション次第で納期が延びるようである。
ただし、ハリアーではZもしくはZレザーパッケージが鉄板グレードであり、過去には調光パノラマルーフとプレシャスブラックパールをオプション選択すると、深刻な納期遅延となっていた。しかし、本稿執筆時点で確認すると、ZもしくはZレザーパッケージのほうがほかのグレードよりも納期が早まっている。グレードの生産比率を変更したようだ。
ホンダでは全般的にガソリンエンジン車よりもHEV(ハイブリッド車)のほうが納期は早いので、HEVの生産を優先しているようである。なおホンダでは、近々現状の納期遅延状況が全般的にそして飛躍的に改善される方向で動いているとの情報もある。
注文を入れたはいいが、まだまだ実際に生産が始まらないようなタイミングでは、オプションの追加など、若干の注文内容の変更はできるようなので、セールススタッフもとりあえず納期が延びるオプションの追加を勧めてくるようである。