この記事をまとめると
■日本で先日打ち上げられらたロケットには月面着陸を目指す無人探査機などが積まれている
■トヨタは有人で月面探査ができる「ルナクルーザー」を開発中だ
■日産は4輪駆動制御の「e-4ORCE」を武器にした無人探査機を開発している
自動車メーカーが目指す次の領域は「宇宙」
9月7日に、日本のH2ロケット47号機が打ち上げに成功した。2001年に1号機が打ち上げられて以来、実績が積み上げられてきたが、今回の打ち上げがとくに注目されるのは、日本初の月面着陸を目指す無人探査機や、NASA(アメリカ航空宇宙局)と共同開発した天体観測衛星などが搭載されているためだ。
天候の影響で打ち上げ日程が延期されたなかでの打ち上げ成功であり、関係者はまずほっと胸をなでおろしたことだろう。
月面着陸ということに関しては、日本のトヨタや日産が、ローバー(探査車)と呼ばれる走行車両を開発している。このうちトヨタは有人での探査車両ということで、有人与圧ローバーとし、愛称をルナクルーザーとしている。三菱重工との連携で、車内の気圧を調整し、密閉された室内では地球上に近い環境をつくり、重力が地球の6分の1、気温が昼は120度、夜はマイナス170度となる月面で、車内に居れば船外活動用の服を着なくて済む環境が保たれる。
車体全長は6m、車幅は5.2m、全高は3.8mになり、マイクロバス約2台分の大きさのなかに、4畳半ほどの客室がある。そこでふたりの宇宙飛行士が、生活しながら30日という長期間の探査をすることができる仕様だ。
トヨタは、自動運転など将来のクルマ開発で培った技術を適応していくことになる。
一方の日産は、無人での探査車両の開発を行なっており、エネルギー使用量が限られる月面の環境において、これまで電気自動車(EV)開発で培ってきたモーター制御技術を使い、タイヤの空転をなくすことで確実に駆動力を使い、少ないエネルギーで移動できることに役立てようとしている。そこには、アリアで採用されている4輪駆動制御のe-4ORCEを進化させ、滑りやすい砂地などでの確実な駆動力の確保を進める。
中国やインドも月面への関心を高めているなか、ロケットを飛ばすという単に宇宙航空技術だけでなく、別の惑星での地上活動に際しての移動に、自動車メーカーの技術が活かされようとしている。ここは、欧米を含め、自動車産業で永年の知見を持つ日本のひとつの力量の見せ所となっていくかもしれない。