アカデミー賞「助演車両賞」を進呈! クルマが主役じゃないのに「日本車」がイイ味出してる「映画とクルマ」7選 (2/2ページ)
外国映画のなかで日本車がシーンに意味を持たせている!
さて、今度は外国映画でも頑張っている日本車と、その作品を紹介しましょう。
まずは超有名なスパイが活躍し、同じく超有名な日本車が登場する映画……そう、『007は二度死ぬ』(1967年公開)です。ジェームズ・ボンド シリーズの5作目は日本を舞台としていることもあって、日本の情報機関のボスに丹波哲郎が、初の日本人ボンドガール(?)として若林映子と浜 美枝が出演。そして、ボンドカーにはいわずと知れた、日本が世界に誇る名車トヨタ2000GT、しかもオープンカーが登場!
トヨタ2000GTは、1967〜1970年にトヨタ自動車工業が製造・販売したスポーツカーです。驚きなのは1960年半ばにして直列6気筒DOHCエンジン、5段フルシンクロメッシュトランスミッション、4輪ディスクブレーキ、ラック&ピニオン式ステアリング、ついでにリトラクタブルヘッドライトを搭載していたこと! そんな名車を映画製作サイドの無理めな要望に応え、たった2カ月間でオープンカーに仕上げたとか。
そんな具合にトヨタは頑張ったのに、ストーリー上ではジェームズ・ボンド役のショーン・コネリーではなく、若林映子が演じるアキが運転することになりました。しかも、実際の撮影では運転免許を持っていない若林映子に代わって、別の役者がドライブしたんだとか。DVDを買って、2カ月で完成したとは思えないほど美しい仕上げのオープンカーのトヨタ2000GTと、それをドライブするのが若林映子じゃないことをチェックしてはいかがでしょうか。
次は佳作中の佳作、おそらく知ってる人は皆無なんじゃないかと思う超マイナーなスポーツ青春ドラマ『ワンオンワン』(1978年公開)を紹介。高校で花形バスケットボールプレーヤーだった主人公が有名大学にスカウトされるんですけどね、まぁ、そこでスポーツ選手にありがちな「挫折→復活」がピュアな恋ととも描かれています。ストーリーのネタバレはここではしないでおきましょうか。
で、主人公が有名大学にスカウトされた際、奨学金のほかに、なんとフェアレディZも貰っちゃうんですよ。1970年代のアメリカといえば、高性能でスタイリッシュな2ドアクーペが大流行! メルセデス・ベンツ280Slが7000ドル、ポルシェ911Tが6000ドル、フォード マスタングとシボレー カマロのV8モデルが5000ドルだった当時、日産は2.4リットル直列6気筒エンジンを搭載したロングノーズ&ショートデッキのフェアレディZを、たった3500ドルで販売。“ベスト・バリュー・フォー・マネー”の象徴として、全米の若者がZカー(愛称)を買ったのでした。
そういう時代背景を1台のクルマで絶妙に表現したということで、佳作の『ワンオンワン』とフェアレディZを紹介したって次第です。つい最近は、沖縄でバスケットボールのワールドカップが開催されたこともあって、今後バスケットボールが活性化しそうですから。興味が湧いた人は、こちらもDVDかネット配信で観てください。
次はロバート・デ・ニーロとメリル・ストリーブという名優が登場しているのに、意外と知られていない『恋におちて』(1985年公開)です。お互いに妻、夫を持つ身でありながら、タイトルどおり恋におちていくという紛れもない不倫の物語なんですけどね、舞台となるニューヨークの街並み(地下鉄も書店もカフェも)がとにかくお洒落のひと言!
で、メリル・ストリーブ演じるお洒落なニューヨークの人妻が乗るのが、ホンダ・シビックなんです。それもシビックとしては3代目となるワンダーシビックで、色はシルバーだったかな。
雨のなか、不倫相手のロバート・デニーロに会いに行くために、シビックを飛ばすわけ。ところが途中で踏切があって電車が近づいているのに、メリル・ストリーブは無理して通過しようとさらにアクセルを踏み込むんです。
確かアメリカには1.5リッター4バルブSOHCのモデルしかなかったはずですが、高回転まで引っ張ったエンジン音が印象的でしたね。でも、踏切直前で間に合わないと判断した彼女は急ブレーキを踏んで、パニックストップするんです。エンジンが止まった車内でステアリングに突っ伏してしまう彼女の心境を、セルをまわしてもなかなかかからないエンジンが代弁しているようで……。いやぁ、ぜひ観てくださいませ。
もうひとつ、ホンダ車が“いい味”出してる作品があります。それは鬼才クエンティン・タランティーノ監督の『パルプフィクション』(1994年公開)です。ギャングのボス、ボスの妻、ギャングの殺し屋、落ち目のボクサーなどが織りなすクライムドラマなんですが、それぞれの個性や人生が絶妙に描かれているのが凄い!
入り込んだストーリーのなかに、ギャングの殺し屋がトラブったときに電話一本で駆けつける「ザ・ウルフ」という人物がいるんですが、彼が乗っているのがシルバーのホンダNSX(アメリカだからアキュラか)です。
現場に駆けつけサクサクっとトラブルを解消して、現場から立ち去る際、NSXのエンジンをレッドゾーンぎりぎりまで引っ張っているのが印象的。フォ〜〜〜〜〜ン、フォッ、フォ〜〜〜〜ン……ってな具合に、ホンダVTECのエンジンサウンドとエキゾーストノートがクルマ好きには堪りません。また、クールで切れ物という人物をシルバーのNSX(決して赤いフェラーリじゃない)で端的に表現していることも、映画ファンには堪らないことでしょう。
最後にロバート・デ・ニーロとアル・パチーノが共演した超名作、『ヒート』(1996年公開)を紹介しましょう。「えっ? こんな有名なハードボイルド・クライムムービーに日本車が登場するの!?」と思う人が多いかと思いますが、じつはアル・パチーノ演じるタフな刑事が、なんと日産のレパードJ.フェリーに乗っているんです。
レパードJ.フェリーは米国向けのインフィニティJ30を流用して作った3代目レパードです。楕円のヘッドライト&グリル、エッジを持たない前後パンバー、尻下がりのリヤエンドなど、アメリカの日産デザインインターナショナル(NDI)がデザインしたスタイリングが非常に特徴的でした。
当時のシーマのパワートレインを流用した270馬力の4.2リッターV8エンジン(200馬力の3リッターV6もあり)や高級感溢れるインテリア(音響スタジオのような静粛性に、当時試乗した筆者はびっくり!)などは、モータージャーナリストやクルマ専門誌には好評価だったんですが、当時のユーザーからは大不評でした。
でも、アメリカでは結構ウケたようで、だからこそ映画にも登場したのでしょう。興味深いのは良いモノ=刑事=アル・パチーノが日本車(レパードJ.フェリー)に乗っていて、悪モノ=ギャング=ロバート・デ・ニーロがアメリカ車に乗っていること。これって、日本車のクオリティが爆上がりしつつあった、当時のクルママーケットを反映していたのかもしれませんね。その後のクライムストーリーのなかでは、ギャングはたいていレクサスに乗り出すんですけどね。
おっと、ロバート・デ・ニーロが乗っているアメリカ車の車名を書きませんでしたが、「何に乗ってるの?」と気になる人は、DVDかネット配信で確認してくださいませ。
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