今後のスバルWRXラリーチャレンジ2023の動向に注目
それでも新井は、「高速コーナーは安定しているし、エンジンも低速トルクが使えるのでグラベルラリーでは勝機があると思います」とまずまずの手応え。「テストで500kmぐらいは走っていますが、まだ本番を走っていないので、パーツがどれくらい持つのか耐久性がわからないし、4カ月ぶりの競技なので抑えながら走りたい。Rally2やR5とくらべると車両重量が200kgぐらいも重いのでかなり厳しいですが、VAB型よりは速く走りたいと思います」とのことで、慎重な走りでラリー北海道に参戦していたのだが、新井は予想以上に苦戦を強いられていた。
「クルマが大きくてドライビングが大変。林道を走っていてリヤがどこにあるのかわからない。リピートステージでフロントを轍にひっかけても、ホイールベースが長くてリヤが合わないか、リヤがかいてくれない」と新井は語っていたが、その言葉どおり、新井はS4ベースの巨体に苦戦。それでも、スバルWRXラリーチャレンジ2023のトラクション性能を活かすべく、新井が縦方向を意識した走りを実践しようとしていたことがうかがえた。
タイム的にはGRヤリスJP4-Rally2を駆るラトバラと勝田範彦、シュコダ・ファビアR5を駆るヘイッキ・コバライネンの直下で、ファビアを駆る福永修と激しい4番手争いを展開。細かいトラブルに遭いながらも、新井はなんとか4番手で9日のレグ1をフィニッシュしていた。
10日のレグ2では、エンジンマッピングの変更が裏目に出たのか、この日のファーストステージとなるSS9「OTOFUKE REVERSE 1」でエンジンがストールし、大幅なタイムロスを喫したが、それでも最後まで粘り強い走りを披露している。最終ステージとなるSS12「OTOFUKE REVERSE 2」では3番手のコバライネンと0.3秒という僅差で4番手タイムをマークし、スバルWRXラリーチャレンジ2023のデビュー戦で4位入賞を果たした。
モータースポーツでは、ニューマシンにマイナートラブルは付き物であり、筆者はスバルWRXラリーチャレンジ2023も途中でストップするのではないか……と予想していただけに、ラリー北海道での4位入賞は賞賛に値する。
また、最終SSではコバライネンのファビアR5に匹敵するタイムをマークしただけに、マシンの熟成が進めばグラベル戦においてスバルWRXラリーチャレンジ2023はポディウム争いができることだろう。
その一方で「高回転が使えないし、車両重量が重いので、ターマックは厳しいと思います。あと50kgぐらいマシンを軽量化できればいいけど……」と新井は語っているだけに、ターマック戦では苦戦を強いられることだろう。
残念ながらスバルはワークス活動を休止し、あくまでもアライモータースポーツでの活動となっていることから、開発予算を含めて厳しい部分はあると思うが、それでもスバルからエンジニアが帯同するなど、マシンの進化が期待できる要素があるだけに、今後もスバルのニューマシン、スバルWRXラリーチャレンジ2023の動向に注目だ。