この記事をまとめると
■メルセデス・ベンツがEQE・SUVを投入して日本でのBEVラインアップが7車種になった
■EQE・SUVの発表会にはメルセデス・ベンツ現会長のオラ・ケレニウス氏が登壇
■乗用車で脱二酸化炭素を実現できるのはEVだと明言
メルセデス・ベンツは乗用車の最適解としてEVを選んだ
メルセデス・ベンツは、新型電気自動車(EV)であるEQE・SUVの発表会に際し、ドイツ本社からオラ・ケレニウス会長が来日し、会見に臨んだ。壇上の背後には、EQA、EQB、EQC、EQE、EQS、EQS・SUV、そして今回発表となったEQE・SUVが実車で展示された。
EQAは、GLAのEV版だ。そしてGLBが基になるEQB、GLCのEV版がEQCとなる。そして、4ドアセダンのEクラスとSクラスに相当するEV、さらにそれらのSUVのEVということで、身近なコンパクト車から最上級車種までのEVがほぼ揃った状態で、それらは日本市場で販売されている。
これほど広範囲な車種でEVを揃えているのは、他社でも多くなく、日本車にはここまでのEVの品揃えはない。なぜ、多彩なEVをメルセデス・ベンツは揃えられるのか。
EQAからEQCまでは、エンジン車と共通部分のあるコンバートEVだ。それに対し、EQEより上級車種は、いずれもEV専用開発のグランドアップEVである。開発戦略の使い分けにより、一気に車種構成を広げられたといえる。
さらに、ケレニウス会長の会見から、EV充実の背景が垣間見えた。
ケレニウス会長は、「乗用車において、脱二酸化炭素を実現できるのはEVである」と明言した。EVは優れた効率であり、送電網はすでに世のなかにある。まだ十分な充電環境ではないとしても、それはまだ始まったばかりだからだと語る。原価についても、EVは抑えられてきているとする。
水素の一例である燃料電池は、物流のトラックなどで開発していると語った。トラック部門は、現在は別の経営となっている。昨今話題となったe-Fuelについては、航空機や船舶などで使えるかもしれないと語ったが、その表情は疑心暗鬼であった。まだ研究開発の途に就いたばかりで、原価も、量産化も、供給体制も明らかではない。それに比べ、電力はすでに各地を網羅している。
そのうえで、「できるかできないかではなく、企業として何を選ぶかが重要だ」と述べた。そして乗用車を開発し販売するメルセデス・ベンツにとって、最適な回答はEVだと結論付けたのである。技術や社会基盤の状況に基づいた、実に明快な論旨だ。
できるかできないか、ということであれば、技術はいつか到達するかもしれない。しかし、それを社会に実装し、エネルギー供給という社会基盤と連携し、人々の役に立つ移動手段であるかどうかこそが、経営者の判断すべきことである。
EVはまた、移動手段だけでなく、社会の電力網とつながった社会エネルギー基盤の一翼を担うことができる。ここは、ほかの次世代車と目されるクルマでは困難な価値だ。EVを、従来からのクルマの延長と考えると、先を見誤るだろう。
ケレニウス会長は「10年後に、メルセデス・ベンツが技術とラグジュアリーの最先端であり続けること」が、重要だと語った。メルセデス・ベンツは、いうまでもなくガソリンエンジン自動車の祖である。そして常に、自動車社会を牽引するメーカーである。
目先の経営だけでなく、10年後の世界を見据えるメルセデス・ベンツの動向は見逃せない。