たった1台の日本車が世界を変えることもある! 「ニッポンの宝」に認定したい国産車4台 (2/2ページ)

文化を作り上げたクルマもある

 スポーツカーやスーパーカーといったハードウェア単独での評価ではなく、「ドリフト」という文化を生み出し、世界に広めたのは、日本のスポーツカーカルチャーにおけるエポックメーキングな出来事といえる。

 では、ドリフトムーブメントの象徴となるモデルは何だろうか。日産のシルビア/180SX(S13系)が日本における初期のドリフトシーンにおいてリーダー的モデルとなっていた面は否定しないが、ドリフト文化の象徴といえるのは、やはりトヨタ・カローラレビン/スプリンタートレノであろう。AE86という型式にちなんで「ハチロク」という愛称で親しまれたレビン/トレノは、ドリフト文化とセットで自動車史の教科書に載せておくにふさわしいモデルだ。

 トヨタ自身が、「ハチロク」という愛称を認め、スピリットを受け継いだ後継モデルとしてグローバルモデル「86」を生み出したことも、「ハチロク」という名前の持つブランド力がどれほど世界に認知されているかが理解できる。

 しかしながら、トヨタというブランド全体を眺めると、ことさらにスポーツというイメージが強いわけではない。たしかに現在は、同社の代表取締役会長を務める豊田章男氏は、トヨタにおけるスポーツイメージを高めたが、いまだにマツダやホンダのほうがスポーティなブランドイメージは強いといえる。

 トヨタには汗臭いスポーツイメージのほかに、スマートなイメージもある。その象徴といえるのが世界初の量産ハイブリッドカー「プリウス」であることは間違いない。エンジンとふたつのモーターを遊星歯車でつないだ動力分割機構によって、エンジンで走ることと、エンジンで発電してモーターで走るモードを同時に実現したトヨタのハイブリッドシステムは1997年の登場時において基本的な部分では完成していた。

 結局、ハイブリッドカーが当たり前の時代になるまで、他社はプリウスが生み出したハイブリッドシステムをキャッチアップすることはできなかったといえるのではないだろうか。まさにプリウスは、自動車史に残るエポックメーキングな技術を積んだクルマといえる。いや人類全体の歴史に残る一台になっているといっても過言ではない。

 とはいえ、世界的にはゼロエミッション(排ガスを出さない)であることがトレンドになっているのは事実で、その点においてはプリウスが示した超高効率ハイブリッド・パワートレインというのは、過去の技術になりつつある。

 そこで最後に、これから世界のトレンドを変え、自動車史においてエポックメーキングなモデルとして記されていきそうな日本車を考えてみよう。

 トヨタ車ばかりになって恐縮だが、フルモデルチェンジしたばかりのアルファード(ヴェルファイア)には、自動車の世界的トレンドを変えそうな予感がある。言うまでもなく、日本国内においては多人数乗車のミニバン(MPV)としてだけでなく、2列にVIPが座るショーファードリブンとしてアルファードは認められるモデルとなっている。

 すでにアジア圏においても、同様にショーファードリブンとしての評価を高めている。たとえば中国においても日本と同じタイミングで発表されていたりする。現時点では自動車文化については保守的な面もある欧州や北米市場においてアルファードのショーファードリブン価値が十分に認知されているとはいえないが、もし世界的に「VIPが乗るクルマは、スライドドアで背の高いスタイル」という認識が広まるようなことになれば、アルファードは自動車史に残るエポックメイキングモデルとなること確実だ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

愛車
スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
趣味
モトブログを作ること
好きな有名人
菅麻貴子(作詞家)

新着情報