30万口ならガソリンスタンドで給油できる数くらいは対応できそう
ガソリンスタンドは、すでに3万件を切って2万8000件ほどとなっているが、各スタンドに5つの給油ノズルがあると仮定しても、一緒に給油できるエンジン車の数は15万台分となるのだから、今回の30万口という充電器整備は、納得できる数字ではないか。
そのうえで、1基の急速充電器で複数口とした場合、イー・モビリティ・パワー(e-MP)が実施している急速充電でのパワーシェアリングの手法を用いると、充電器の最高出力をすべてのEVが得られなくはなる。ただし、リチウムイオンバッテリーの特性から、ある程度急速充電が進んだ段階では受け入れられる電力が小さくなるので、あとから充電しに来たEVに高い出力を優先するといった充電管理を活用することで、充電器設置の際の電力基本料金の抑制ができることにつながる。つまり、電力契約の変更を最小限に抑えながら、充電器設置の機会を広げられることになる。
ただし、これらの充電管理はまだ試行錯誤の段階といえるだろう。試行錯誤を繰り返しながら充電器の設置を充実させるなかで、高性能充電器をより多くのEV利用者が使えるように整備の仕方も進化していく必要がある。
一方で、基礎充電となる自宅での普通充電の整備を忘れてはならない。基礎充電があってこそ、経路充電(急速充電)の価値が正当に活かされる。そのためには、単に充電器数や充電口数といった数字を整備の標とするだけでなく、EVを活かすためのあるべき充電形態の整備を明確にし、それを政策に取り込む、きめ細かな策が不可欠だ。その点において、今回の30万口には、基礎充電と目的地充電という普通充電の口数も含まれている。
これまで行政が行ってきた社会資本整備は、予算や数値目標だけが評価の対象となる傾向だったのではないか。EVの普及をはじめとする環境対策の多くは、質という中身も吟味されなければ理想的社会を生み出すことはできない。なぜなら、これまでと価値観の異なる新しい社会の創造であるからだ。
政府や地方自治体は、EVの充電器設置だけにとどまらず、VtoG(EVと送電網をつなぐ)のような電力網の再構築も視野に入れた、21世紀の環境社会を構築する政策が数字だけで完結しないことを肝に銘じるべきである。