最悪数十万円の出費も! 酷使は故障の元なので要注意
エアコン(クーラー)が利かなくなる理由とは?
クーラーの仕組み上、高圧と低圧の圧力差が小さくなってしまうと、それが冷却能力の低下に直結するので、圧力を維持することがいちばん重要です。つまり、クーラーの利きが良くない理由のいちばんは「ガス漏れ」です。
では、ガスはどうやって漏れてしまうのでしょうか? いちばん多い原因はパッキンの劣化とされています。クーラーを構成する各部分は、専用のパイプによって連結されています。そして、連結部分にはガスの漏れを防ぐためのゴム(シリコン)パッキンが使われています。このパッキンが長年の使用で劣化してしまい、ガス漏れにつながります。連結部のガス漏れは、コンプレッサー出口から減圧バルブまでの高圧セクションでもっとも起こりやすいようです。
また、ガスを圧縮するコンプレッサー内部でもガス漏れは起こるようです。パイプの連結部と同じようにコンプレッサーの駆動部分にもパッキンが使われているので、劣化や摩耗など、ガス漏れを招く状態が起こりうるんです。
このパッキンの劣化がもっとも強く起こる原因とされているのが、異なるガスに入れ替えられた場合です。先ほど紹介したように、冷媒には種類があります。パッキンはその冷媒に最適化されているので、成分が違う別のガスに対しては耐性が確実には保てないのです。具体的に言うと、旧いクルマに使われている「R12」仕様のクーラーに、新しい「R134」のガスを注入した場合にパッキンの劣化が起こり、かなりの確率でガス漏れを起こしているという話を聞きます。
また、例は少ないケースですが、パイプの疲労によるひび割れからガスが漏れるという場合もあるようです。
ガス漏れの対策と修理の方法
まず、ハッキリとした対策としては、旧い「R12」仕様のクーラーに「R134a」などのほかのガスを注入しないことが必須でしょう。とはいうものの、「R12」はもう作られていないガスなので入手は困難です。では、どうすれば良いでしょう? 手間はかかりますが解決策はあります。クーラーをいちどバラして、各部のパッキンを「R134」対応品に交換する方法です。この方法が使えるかどうかは対策品の対応次第ですが、主な空調メーカーの製品なら可能性はあります。
不適応ガスの使用とは別に、一般的なガス漏れの対策ですが、パッキンの劣化を防ぐためには、なるべくおだやかな環境で使うことです。例えばオーバーヒート付近まで酷使しないということ。高温になると、耐性があるとは言っても劣化が進行しやすくなりますので、なるべく温度を上げないことがひとつ目。
そしてその逆に、凍るような寒すぎる環境も同様に、パッキンが劣化しやすい状況なので、できるだけ使用は避けたいところです。
クーラーの利きが悪くなった場合は、もうなかのガスの圧が抜けている状態と考えていいと思いますので、そうなったら修理が必要です。ディーラーに預けたり、近所の修理屋さんに依頼するなりすれば、そこから空調専門の業者さんに依頼が行き、キッチリ修理してもらえるでしょう。内容はおそらくパッキンの全交換です。場合によってはコンプレッサー交換になるかもしれませんので、いちおう覚悟しておくと心理的なダメージが予防できるでしょう。ちなみに、コンプレッサー交換までになると数十万円の出費になる場合もあります。
そのほか、ガス漏れ以外の理由を考えてみると、コンデンサーの位置によって、走行時に付着した泥や落ち葉などで放熱効率が下がってしまうケースもあり得ます。この場合は、高圧洗浄などで単に汚れを取り除いてあげれば解決する可能性が高いです。
真夏の時期にクーラーのトラブルなんて考えたくもない状況ですが、万が一にも最悪のタイミングでクーラーの不調に見舞われないためにも、少し暑さを感じ始める梅雨の時期くらいに、クーラーの作動と効きを確認しておくとよいかもしれません。