この記事をまとめると
■10年落ち以上のクルマではエアコンの利きが悪くなるケースが多い
■エアコンガスは数種類あり、正しいものを使わないとすぐに壊れる可能性が高い
■クルマに負荷がかかった状態で使うと寿命を縮めやすいので労って使うと長持ちする
エアコンが利かなくなる原因とは
「ひと昔前はエアコン無くても気合いで乗り切れたけど、近年の夏はもうムリ……」なんていう会話をちらほらと聞くようになった旧車イベント界隈。いまはクルマも家庭も、夏はエアコン無しには過ごせない気候になってきた感が強まっています。
しかも、旧車のようにエアコンが無いクルマはもとより、エアコンが利かないというケースは、10年以上経過した車両のオーナーにとっては珍しい話ではありません。
なかには「今年はエアコンの利きが悪いな……」なんて感じながらも、一応涼しい空気は出ているので自分を誤魔化しながらそのまま使い続けている人もある程度いると思われます。それというのも、クルマの機構のなかで、エアコンはその仕組みがよく知られておらず、わりとブラックボックスの扱いになっているのではないかと考えます。なので修理の費用も取っかかりがつかめておらず、修理に出すのを尻込みしているという状況ではないでしょうか。
ではどのようなことが原因でエアコンの利きが落ちてしまうのか? あらためてエアコンの仕組みを知り、その理由を検証しながら、対策についても考えてみましょう。
まずはエアコンの仕組みを知っておきましょう
エアコン(以下クーラー)がなぜ冷えるのでしょうか? 答えは気化熱の現象をイイ具合に活用しているからです。意外でしょう? もっとハイテクな原理で動いている気がしていた人も少なくないんじゃないでしょうか。原理で言ったら、少し前に流行った冷却タオルや、昔長屋の前でよく見た打ち水と同じでなんすからちょっと拍子抜けです。ついでに言うと冷蔵庫もクーラーと同じ仕組みで動いています。
気化熱の現象とは、水などの液体が蒸発(気化)するときに、まわりの熱を奪っていくことを言います。汗をかいて風を受けるとひんやりするアレです。クーラーはその現象を最大限発揮させることで、温度の下げる量を大きくしているんです。
カーエアコンのクーラー部分は、ガスを圧縮する「コンプレッサー(圧縮ポンプ)」、高圧高温になったガスの熱を下げる「コンデンサー」、圧を抜いて気化させてまわりを冷やす「エバポレーター(熱交換器)」、その冷えた空気を室内に送る「電動ファン」で構成されています。
続いて、エアコン作動の仕組みです
①:エンジンの駆動力をわけてもらってコンプレッサーがまわると、なかに充填されているフロンガス(冷媒)が高圧になって液化します。この際、圧が上がるのと同時に温度も上がります。
②:高圧高温になった液体は、ラジエターと同じ構造のコンデンサーで放熱して温度が下げられます。
③:温度が下げられた高圧のガスが室内機のエバポレーター(熱交換器)に送られ、その入り口にあるバルブで解放され圧が下がります。圧が抜かれた液体は気化するので、そのときに圧に比例して温度が下がります。エバポレーターを通過するときに、冷たいガスはまわりの空気の熱を奪って温度が下げられます。
④:温度が下げられた空気は電動ファンで室内に送られ、室内の温度が下げられます。
⑤:室温に近くなったガスはまたコンプレッサーに送られて……①に戻ります
これが繰り返されることでクーラーが冷気を生んでくれるのです。
冷媒としてクーラーのなかに封入されているフロンガスは、気化する沸点が常温に比べて低いという特性を活かして使用されています。これにはいくつか種類がありますが、大きく分けると、オゾン層を破壊するということで1990年代に採用を廃止した「R12」、そしてそれに代わる冷媒として登場した「R134」の2種になります。ちなみに「R134」のなかでも古い「R134a」と、その改良版の「R134yf」があります。