海外トラックの日本市場進出がトラックカスタムの潮目を変えた
デコトラ業界に忍び寄る危機!
『トラック野郎』公開前は、先駆者的存在な一部のトラックドライバーが愛車のトラック・ダンプを飾っていたものが、同作シリーズの大ヒットの影響で老若男女問わずにデコトラという言葉とスタイルが浸透する社会現象となった。幼少期にそのブームの直撃を受けた者はデコチャリに始まり、やがて免許を取得するとこぞってトラックドライバーとなり、競うように愛車のトラックにデコレーションを施し、そして先駆者的存在から2世代目が台頭するようになっていった。
トラックへの飾りが先鋭化すると、時を同じくして規制・コンブライアンスの強化が叫ばれるようになり、だんだんとデコトラへの風当たりは厳しくなっていった。とくに大手輸送会社や荷主によっては、ハンドルカバーという目立たない装飾品であっても禁止されるという事態に陥ってしまい「自分好みにキレイに着飾ったトラックでは仕事ができない」というのが通説になってしまったのだ。
近年ではバンパーライト(乗員の乗り心地をよくするためキャビンにクッションが備わる。その際の光軸がぶれないようにするためバンパー部分にヘッドライトをつけるデザインが多くなっている)ゆえ、かつてのような大胆なカスタムは技術的にもデザイン的にもしにくくなっている。
トラックカスタマイズの新潮流が登場!?
潮目の変わり時となったのが、海外トラックメーカーの国内市場参入だ。欧州トップブランドのボルボトラックスとスカニアが国内参入を果たし、ディーラー網が整備されると、国内メーカーからの乗り換えも急増。ユーザーはごく自然と欧州トラックへのカスタマイズを模索し始めた。
だが、純粋な和風のデコトラスタイルは、欧州トラックには似合わないことは一目瞭然。大陸間移動が日常茶飯事の欧州トラックは居住性を確保するために、国産トラックとは比較にならない程キャビン寸法が大きく、デコトラ三種の神器という「シートデッキ」「フロントバイザー」「カスタムバンパー」の取り付けができない。さらには電飾が光る「アンドン板」や荷台を彩る「和風のペイント」に使用される日本固有の漢字文字が、生まれの異なる欧州トラックには似合わないというのも大きな理由だ。
そのため、ユーザーは輸入書籍やインターネットで本場欧州のカスタムを読み漁るように研究し、個人輸入で本場のパーツを取り寄せた強者もいたという。そういった労を重ねて飾り上げたカスタムトラックは、あれよあれよという間に話題を集め、ついには国産トラックのユーザーたちもが和風のデコトラスタイルではなく、欧州仕様のカスタマイズに着目し、愛車のドレスアップに取り入れるようになっていき、「ユーロスタイル」というジャンルが確立された。
この急速な変化の一因として、「デコトラでは規制に影響を受けるが、ユーロスタイルでは影響を受けにくい」という業務上の課題や、「深刻化するトラックドライバーの人員確保」という輸送業界全体の課題の解決として、受け入れられているという側面もある。
「和風デコトラ」と「洋風デコトラ」、どちらが正解という訳ではなく、クルマ好きのトラックドライバーの「愛車を自分だけのスタイルで飾り上げたい!」という欲求を満たす方法論の違いであった!