この記事をまとめると
■デコトラは数少ない日本初の文化として海外でもよく知られている
■今回は運転席を含めるキャビンまわりを装飾するための大型パーツを解説
■デコトラアイテムの多くは実用的なものが飾りへと進化して誕生している
派手さから美しさへと移行するジャパニーズカルチャー
トラックを派手に装飾(デコレーション)したデコトラと呼ばれる日本独自の文化。世の中には数多くの改造車たちが存在しているが、その大半が海を渡って日本へとやって来たもの。日本発祥のものは意外と少ないため、デコトラは日本が世界に誇るべきカルチャーであると言えるだろう。
派手なカスタムやうるさいマフラー音などがつきまとう改造車は、当然のごとく世間から煙たがられてしまう傾向にある。しかし、デコトラは日本から世界へと発信する大舞台である東京パラリンピックの開会式に採用されるほど、日本の文化として広く浸透しているという少々異質な存在なのである。
好き嫌いはともかくとして、興味がない人にまで存在を知られるほどのデコトラ文化であるが、詳しい部分については知らない人が大半だろう。日本が生み出したデコトラの世界は、とにかくマニアックでディープなのである。ここでは、青春時代をデコチャリ(デコトラのように飾り立てた自転車)の製作に費やし、かつ実際にトラックを飾ってきたという経歴を持つ、デコトラ専門誌「トラック魂」編集部に属する筆者が、公私ともに愛するデコトラについて解説していきたい。
世間の人たちは、ここまで派手に飾られたトラックこそが「デコトラ」だという認識でいることだろう。しかし、デコトラ界にも変化が生じている。とくに仕事で使われているトラックにおいてはボディや細部架装に力を注ぐ傾向にあるため、素人目では即座に判断できなくなっている。写真は、NPO法人全国哥麿会の「元禄丸」(編集部で画像の一部を修正しています。撮影日:2020年11月)。
苦楽をともにする相棒を華やかに飾り上げるための手段とは
デコトラ界における専門用語は数多く存在するが、今回は入門編として手始めに、運転席を含めるキャビンまわりを装飾するための大型パーツについて述べてみたい。
まずは、ルーフの上に載せる「シートデッキ」。骨組みの上からステンレス板を巻いて製作するのが一般的だが、ステンレスの角パイプで構成されたものも「鳥かごスタイル」と呼ばれて人気を集めている。地域や世代によっては「シートキャリア」や「シート台」とも呼ばれるのだが、元をたどれば実用的なアイテムだった。シートデッキは平ボディに使用する荷台用のシートを収納するための装備であり、そこに電飾パーツなどを取り付けたことで発展してきたのだ。
やがてさまざまなデザインのものが生み出され、シートを使用しない箱車にまで装着されるようになったシートデッキは、いつの頃からか主要なる飾りとして確立したのである。
写真は、前出の「元禄丸」。シートデッキの形状自体はシンプルだが、数多くのアンドンでデコレーション。これは、昭和時代の水産便を連想させるものだ。
写真は、角パイプで構成された鳥かごのシートデッキ。形状そのものにこだわりを見せる、とても優れた逸品である。派手にすれば良いというわけではなく、高品質であれば良いというわけでもない。デコトラ界では、全体のバランスを考慮して飾ることが必要とされるのだ。一等地となるため、メインアンドンと呼ばれる看板灯には車輌のニックや所属するクラブ名、及び会社名を刻むのが定番となっている。