まだしばらくはエンジンが主流! 日本よりも圧倒的にBEVタクシーが普及しているインドネシアで見えた課題とは (2/2ページ)

BEVタクシーには「課題」もまだまだ多い

 乗車したのはBYDのe6といわれる車両。いまでは2代目がデビューしているが、乗車したのは2009年にデビューした初代で、タイの首都バンコクなどでもタクシーとして使われており、タクシーなどのフリートユースとしてモデル末期は販売されていたようだ。

 かなり以前に中国で使い倒した中国車のタクシーに乗ったことがあるが(ICE車)、ドアはガタガタいうし目に見えて劣化しているのがわかる状態に驚いた。今回乗ったe6もかなり使い倒しているように見えるが、意外なほどしっかりしていることに驚かされた。BEVなので静粛性は高いし車内は快適。南の島インドネシアはいまでは日本の夏より涼しいのだが、それでもエアコンは欠かせないのだが冷房の効きも暑がりの筆者でも文句のないレベル。また日本でのトヨタJPNタクシーに比べると後席のクッションに厚みがあるようでじつに快適。古いモデルなのにボディもしっかりしており、これが最新型だったら……、と考えると“日本車ヤバいなあ”という気持ちになってしまった。

 このタクシー会社にはBYD製の「T300」という、日産のNV200バネットに似た、ワンボックスワゴンタイプのBEVタクシーもある。筆者が乗り場にいた時はいなかったが、後日知り合いがこのT300のタクシーに乗ってショー会場近くのホテルにやってきた。知り合いいわく「BEVうんぬんを言う前に、居住スペースの広いワンボックスワゴンなのに空調吹き出し口がインパネ部分にしかなくて暑い思いをした」と大汗をかきながら話してくれた。

 ジャカルタ市内の一般的なICE車のタクシーは、トヨタ・トランスムーバーという、MPV(多目的車)スタイルの車両となるが、トランスムーバーには前席と後席の間あたりの天井に後席向けのサーキュレーターがあり、フロントの冷気を後席にまわすことができる。しかしT300にはサーキュレーターも用意されていないというのである。

 かつてインドネシアのタクシーと言えば日本同様にセダンタイプとなっていた。筆者がジャカルタを訪れはじめた時には、トヨタ・ヴィオスベースの専用車として「リモ」ばかりであった。

 その後、いまでは東京では半ば当たり前だが、黒タク(車体色が黒いタクシー)が出始めたころのように、車体色の黒いハイグレードタクシーが用意されるようになった。初期のころにはメルセデスベンツEクラスだったのだが、その後トヨタ・アルファード、そしてテスラ・モデルXがハイグレードタクシー車両としていまでは市内を走っている。

 過去には韓国ヒョンデ自動車グループや、中国のウーリン(上海通用五菱汽車)などのタクシー車両(ICE車)もあったが、耐久性能に問題があったようで早々にタクシー車両から退場となっている。

 全面的にBEVに切り替えるには、充電ステーションなどのインフラ面の問題もあるのでまだまだ時間がかかるように見える。また導入しているタクシー会社でも、メンテナンスなどの理由で保有している車両を全稼働させることがなかなかできないようだと知り合いが教えてくれた。当分は最大手のタクシー会社がイメージアップのためにもじわじわとBEVタクシーを増やしていくことになるようなペースなので、ICE車がしばらくはタクシー車両のメインであり続けることは間違いようだ。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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