新型センチュリーはSUVに見えるけどSUVじゃない? デザインのプロがチーフデザイナーを直撃した (2/2ページ)

センチュリーであることよりもトヨタ車であることを打ち出した

●品格のあるシンプルなボディにこだわる

 トヨタ自身が「水平・垂直を基調としたボディ」と謳う新型ですが、ボディの横にまわってみると、とにかく上下に広いドア面に驚きます。目立ったキャラクターラインがないばかりか、大きなS字断面もなく、かなりシンプルな表情なのです。

「サイドはほとんど平面と言っていいほどで、とにかくプレスの担当者に頑張ってもらいました(笑)。しかも、センチュリー独自の几帳面(平安時代の屏障具の柱にあしらわれた面処理の技法)がショルダー面を括るようにハイライトを作っており、これに影響しないよう進めるのも難しかったですね」。

 最後にリヤに目を移すと、かなり角度を付けたクォーターピラーが意外です。最初に実車を見たとき、「思ったよりスッキリしているな」と感じたのは、もしかしたらこれが理由だったのかもしれません。

「センチュリーだからといって、必要以上に重さを打ち出すつもりはありませんでした。それよりも、いまという時代に沿った、あるいはトヨタ車らしいスタンスのよさを重視したんです」。

 たしかに、クラウンクロスオーバーあたりからのトヨタ車は、シンプルな造形とともにスタンスのよさを徹底して追求しているようです。それはセンチュリーでも変わらないということでしょう。

 発表会では、もはや工芸品とも言えるエンブレムなども展示されていましたが、ボディ下部を覆うシルバーのカバーも含め、ここまで日本の美意識を直球で表現したクルマが世界に出ることはなかったかもしれません。

 いまや高級SUVは各メーカーの独自性を競っていますが、この「日本の品格」が海外市場でどんな評価を受けるのか、じつに興味深いところではあります。


すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

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いすゞFFジェミニ4ドア・イルムシャー(1986年式)
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オヤジバンド(ドラムやってます)/音楽鑑賞(ジャズ・フュージョンなど) /カフェ巡り/ドライブ
好きな有名人
筒井康隆 /三谷幸喜/永六輔/渡辺貞夫/矢野顕子/上原ひろみ

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