かつてブイブイ言わせてた「デコトラ」はどこいった? 街から姿を消してもしっかり生き残ってるイマドキの「デコトラ事情」 (2/2ページ)

いまでは日本独自の文化として世界規模で人気に

 数は減ったとはいえ「デコトラ」が淘汰されてしまったかというと、そうではないようだ。

 映画『トラック野郎』のロケで協力したデコトラの親睦団体、「全国哥麿会(ぜんこくうたまろかい)」は毎年、ゴールデンウイークとお盆、そして大晦日と年に3回、チャリティ撮影会と称したイベントを実施。ゲストによる歌やダンス、レアなグッズを集めたチャリティオークション、車両紹介などを行っているが、日本中のみならず海外からも1000人を超えるファンが詰めかけるほどの盛況ぶりで、「デコチャリ」と呼ばれる、トラック用の電飾パーツで飾り立てた自転車でやってくる中高生のファンもいるほどだ。

 2014年4月には、映画「トラック野郎」で実際に劇用車として使用されていた一番星号(1975年式三菱ふそうFU113)が全国哥麿会の手によりレストアされ、同年11月には映画で主演を務めた菅原文太氏が逝去されたことに伴い、再び「トラック野郎」が脚光を浴びることになった。

 レストアされた劇用車の「一番星号」。東映から大阪在住の前オーナーの手に渡り、2014年には現オーナーである「全国哥麿会」の田島順市会長に譲渡され、レストアされた(ジャパントラックショー2016にて撮影)

 ここ近年は、かつて仕事で使っていたデコトラを引退させ、ナンバーを営業用の「緑ナンバー」から自家用の「白ナンバー」に変更、荷台コンテナのなかをリビングのように改造してトラックベースのキャンピングカーのようにリメイクをしたり、仕事で使用するトラックは飾らずに、通勤用に軽トラックや1.5~2トン積の小型トラックを購入したりして飾る向きも増えてきた。

「トラックは仕事をしてナンボ」という声も聞こえそうだが、キャラバンやハイエースのような4ナンバー商用車をエアロパーツやリフトアップパーツなどでドレスアップしてプライベートで使用することと根本的には変わらないのではないだろうか。そう考えると、驚くようなことではないのかも知れない。

 本職が大型トラックのドライバーだというアラケンさんはプライベートでは三菱ふそうキャンターを愛用している。陸運局で構造変更を行ったため、車検にも対応済だ(提供:アラケンさん)

 アジアのパキスタンやタイでは、トラックを飾ることで神が宿る(=自分の命が守られる)と考えられ、交通安全の信仰としてトラックを飾る。また、アメリカやヨーロッパの各地では、ドレスアップした個人所有の大型トラックやトレーラーを展示した「カスタム トラックショー」が定期的に開催されている。

 世界中でスポーツカーやSUVがカスタムされるのと同様に、トラックをカスタムしたいと思う人たちがいるのも世界共通。日本では、深夜の街道やハイウェイで電飾を光らせて荷物満載で闊歩する「デコトラ」は確かに減ったが、トラックを試行錯誤して飾り立てた先人たちや、俳優・菅原文太に憧れてトラックドライバーになった人たちの心意気は根強く残っており、中高生の若い世代へも着々と引き継がれている。


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