日本のモノづくりのスゴさを見せつけるディテールのクオリティ
さらに、センチュリーの伝統といえば、本当に鏡として使えるくらいピカピカで深みのある鏡面仕上げボディだ。
これまでも、「センチュリーはボディを鏡がわりにしてVIPが身だしなみを整えるために鏡面仕上げになっている」という都市伝説もあったが、新型ではその光沢が期待以上に深みがあり、なおかつクリアなものとなっている。ドアパネルにほとんど歪みなく全身を映すことができるので、降り際にスーツをビシッと整えるといったVIPのルーティンも生まれそうだ。
聞けば、新型センチュリーを製造するトヨタ自動車・田原工場の中でも腕利きの匠が、ボディ塗装工程において複数回の水研ぎや最終の鏡面仕上げを担当しているのだという。新型センチュリーの生産目標は月間30台となっているが、全11工程からなるボディ塗装および鏡面仕上げだけでも、かなりの時間を要するというから、それ以上の生産規模にすることは難しいのが現実のようだ。
また、内装ではシートやドアトリムに本物の刺繍が施されているのが印象的。トヨタ自身は声高にアピールしていないが、これらの刺繍は運気を上げる、縁起のいい模様としているという。こうした奥ゆかしさも日本的なショーファーカーらしいところだろう。
このように、内外装のディテールごく一部を見ただけでも、新型センチュリーが非常に丁寧に開発され、製造されていることが伝わってくる。
だからこそ気になるのは、リヤフェンダー部分の左右におかれたリッド形状が異なる点だ。
ボディ右側にあるのが普通充電器をつなぐためのリッドで、これは「几帳面」と呼ばれるリヤまわりのパネルデザインのなかに自然に溶け込んでいる。一方、左側には燃料給油口を隠すリッドが置かれているが、こちらは面を飛び出し、キャラクターラインを分断するような位置に置かれている。
燃料タンクの位置、標準で20インチという大径タイヤを避けるパイプレイアウトなどの都合から、この位置に給油リッドを置くことになってしまったというが、ここで妥協してしまったように見えるのは非常に残念。たしかに骨格を考えると難しいのは理解できるが、それでもリッドを左右対称のデザインにするようこだわって欲しかったと思うのは、筆者だけだろうか。