インドネシアは買い物から交通まで「カードをタッチ」のキャッシュレス化が普及! 世界で主流のクレジットじゃなくプリペイド式の理由とは

この記事をまとめると

■インドネシアでは「eマネー」と呼ばれるタッチ決済カードが普及している

■ショッピングだけでなく高速道路の料金所や地下鉄、バスなどでも利用可能だ

■「eマネー」の普及の背景にはプリペイド式となっていることが大きい

いまやタッチ決済は世界中で一般的な支払い方法となっている

 そして、今年の8月にインドネシアの首都ジャカルタを訪れた。空港到着後、取材先のオートショー会場のあるジャカルタ近郊の新興都市へタクシーを利用して向かった。高速道路メインでの移動となり、道中料金所がいくつかあったのだが、料金所を通るたびにドライバーが何やらカードをタッチしていた。「なるほどインドネシアでもVISAタッチ(クレジットカードを端末にタッチするだけで決済ができるシステム)が普及しているのだな」と思った。

 ちなみに過去には高速道路料金はその都度現金を要求されたり、目的地到着時に現金決済していたと記憶しているのだが、日本並みに大手タクシー会社の配車アプリの普及(事前に登録したクレジットカードなどで決済可能)や、キャッシュレス決済が普及しているようで、カードにて決済した通行料金をドライバーが料金メーターに任意入力してメーター料金に合算して精算する方式になっていた。

 それではドライバーがタッチしていたカードとはどのようなものなのかというと、日本での交通系ICカードのような“eマネー”と呼ばれるものであったのだ。クレジットカードではなくプリペイド式。筆者はショー取材後、ジャカルタ市内を歩きまわる予定だったので、「地元系コンビニへ行けば買える」との情報をもとにコンビニをまわるが、どこもeマネーは売り切れ状態。地下鉄の複数の駅を訪れると、そこにある自動販売機でも売り切れていた。ようやくバスターミナルの自動販売機でeマネーカードをゲットすることができた。日本でも交通系ICカードの販売中止が相次いでいるが、やはりインドネシアでも半導体不足から在庫不足となっていたのだろうか。

 じつは今回のGIIAS2023のショー会場内には、ジャカルタ首都圏の通勤電車の運行を行っている、“KAIコミューターライン”がブースを構え、そこでインドネシアの独立78周年を記念した交通系ICカードを販売していたので購入していた。購入時には「地下鉄やバスなどなんでも乗ることができる」と説明を受けて購入したのだが、確かに地下鉄は乗車できたが、路線バスに乗るときに車内端末にタッチするとエラーとなってしまった。車掌(車両はワンマンバス仕様なのだがなぜか車掌が乗っている)さんが「これは使えない」と言い出した。地下鉄の駅でも、自動改札機に後付けされた端末にタッチしたら反応していたので、KAIコミューターラインの“マルチトリップカード”に、鉄道以外は対応しきれていないのだなと筆者は考えた。

 試しにコタ駅というターミナル駅の窓口でeマネーのチャージを頼むとできないと言われた。バンコクでも高架鉄道と地下鉄は別のカードとなっており、さらに3枚目として両方使えるカードが登場するなど、カードを統一できないのは“東南アジアあるある”なのかもしれない。

 eマネーに話を戻すと、eマネーの特徴は鉄道やバス、そしてショッピングに使えるだけでなく、高速道路の通行料金や駐車場代などまで決済できることが大きい。前出のタクシーでも料金決済はeマネーで行っていたのである。そのため、高速道路の料金所は原則無人(大きな料金所では奥まったところに料金所もかねた有人のドライブスルータイプの金額をチャージするボックスがあった)となっている。

 eマネーがここまでマルチに使え、キャッシュレス決済普及に一役買っている背景について、事情通は「プリペイド式というのが大きいですね。インドネシアでは就労環境が不安定の人が多く、クレジットカードの審査が通らない人がかなりいます。そのため、クレジットカードベースでのキャッシュレス社会の実現は難しいのです。ちなみに携帯電話も圧倒的にプリペイド式が多くなっています」とのこと。

 コンビニのレジで待っていると、クレジットカードでの決済はかなり面倒そうで時間がかかっていた。スマホのQR決済もなんだかやたら時間がかかっていた。一方、eマネーはタッチするだけなので、その利便性は高いのかもしれない。

 日本政府のハチャメチャというか、利権まみれに見えるというか、国民にとって未来を感じさせないデジタル化と比べると、やれるところからやるといったイメージも強く受けるインドネシアの柔軟な動きはとても印象的であった。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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