昨日までのトップモデルが一夜で引き立て役に変わる
メルセデス・ベンツ190E 2.5-16 エボリューション2
言わずと知れた「エボ2」の呼び名でツーリングカーレースを席巻したホモロゲーションモデル。エンジンは名工コスワースによるヘッドチューンが施され、ボディワークはメルセデスがメインと考えたDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)のレギュレーションに沿ったカスタマイズがなされて1990年のシーズン中にリリースされています。
190シリーズの頂点に君臨していることはご承知のとおりですが、エボ2が出る前は190E2.3-16というこれまたコスワースチューン、エアサス装備の「よく走る」トップモデルがあり、さらに2.5リッターにスープアップされ、シャシーやエアロパーツを強化した2.5-16エボリューション(のちにエボ2と区別するためにエボ1と呼ばれました)へと昇り詰めました。
フロントのエアダムをはじめ、北関東のヤンチャな成人式を思い起こさせるオーバーフェンダー、極めつけは数段階の調整ができる巨大なリヤウイングと、そのエアロカスタムに目が惹かれがちなエボ2。ですが、進化のプロセスにはメルセデスベンツらしい質実剛健さや、コスワースの力添えもあって「レースで勝てる」カスタムが垣間見え、これぞ「上には上がある」の典型にほかなりません。
ちなみに、DTMでの成績は、メルセデス・ベンツの本気が発揮され破竹の勢いだったこと、ご記憶の方も少なくないでしょう。あまりの快進撃ぶりに嫉妬したのか155V6Tiでアルファロメオが参戦したのも有名なエピソードです。
「最善か、無か」を標榜していた時代のメルセデスベンツが、2.3-16Vを最上としていたにもかかわらず、その上のエボ1&2を出してきたとは、矛盾するような気もしますが、それほど「レースで勝ちたかった」のかと思うと、なんだか人間味を感じてほっこりするのは筆者だけではないでしょう。
ホンダ・シビックタイプR 無限RR
2007年にリリースされるや、秒で完売となったのがシビックタイプRのさらに上を行く無限RRバージョンでした。オリジンのタイプRでも相当、というか「これのどこが物足りないの?」ってくらいのパフォーマンス&お値打ち価格でしたが、やっぱり上が出ると欲しくなってしまうのでしょうか。
ともあれ、無限RRは上述のBMWやメルセデス・ベンツと同じくパワーアップや軽量化などを徹底し、またスタイリングも差別化が図れるのが大きな特徴。エンジンフードやスポイラー、極めつけはGTレーサーのコンセプトを用いたリヤウイングでしょう。無限のテーマカラーであるレッド(ホワイトもあり)をメインビジュアルに使っているのもオリジンのホワイトに対抗するもので、インパクトは絶大かと。
また、吸排気のチューンアップだけで15馬力のエクストラパワーを得ていることも見逃せません。240馬力という数値はオリジンユーザーが歯噛みして悔しがったはず。悔しいといえば、わずか15kgという軽量化ですが、タイプR大好きユーザーにとっては無視できないポイント。無限のこだわりや、オリジンに対するマウントポジションへの執念を感じずにはいられません。
むろん、チューンアップやカスタムパーツの代償は小さいものではなく、オリジンに対しておよそ100万円のエクストラが求められることに。ふたを開けてみれば秒で売り切れたわけですから、「そんなの関係ねぇ」だったのでしょう。
なお、今回ご紹介した「上には上がいる」モデルは総じて中古車価格が爆上がりしていることも共通しています。なかにはベースの5倍とか10倍の値付けもされるモデルもあり、M3やタイプRといった優れたベースモデルが「引き立て役」になっているかと思うと、なんとも贅沢な市場ではありませんか!