ゴルフの売れ行きは好転したがそれ以外が……
直近の売れ行きはどうか。販売店に尋ねると以下のように返答された。「以前はゴルフヴァリアント(ワゴン)の納期が1年に達して、ハッチバックも長かった。そのために納期の短いTクロスが、ゴルフよりも多く販売されたこともあった。最近はこの状況が落ち着き、ゴルフも1リッターや1.5リッターターボのハッチバックなら2〜3カ月、ヴァリアントでも2〜4カ月で納車できる。GTIは今後長期化する心配もあるが、今なら約4カ月だ」。
このようにゴルフの売れ行きは好転してきた。直近となる2023年第2・四半期(4〜6月)の登録台数は、メルセデスベンツCクラスを上まわり、輸入車販売の2位になった。1位はミニだが、そこにはコンパクトな3ドアからワイドボディのクロスオーバー、オープンモデルのコンバーチブルまですべてが含まれる。いわばミニブランドの総台数だ。ユーザーがクルマを選ぶ時の感覚でいえば、ゴルフが実質的な1位になる。
このようにゴルフ人気は回復したが、VWブランド全体の国内登録台数は、依然として1位ではない。前述のとおりメルセデスベンツとBMWに次ぐ3位だ。
この背景には車種の少なさもある。2023年第2・四半期の輸入車販売ランキングを見ると、上位20車の中に、メルセデスベンツであればCクラス、Gクラス、GLB、GLC、GLA、Aクラスと6車種が入った。その点でVWは、ゴルフは多いが、それ以外のTクロス、Tロック、ポロは順位が下がる。BMWは2シリーズと3シリーズが比較的上位に入り、X1も堅調だから、ブランド全体ではVWの売れ行きを少し上まわった。
このようにVWでは、ゴルフの売れ行きが回復したものの、それ以外は冴えない。とくにコンパクトなTクロスやポロは、日本の道路環境に適したサイズなのに、あまり売られていない。内装の作り、低回転域で加減速を繰り返した時の滑らかさ、エンジンノイズなどをもう少し洗練させる必要がある。VWは排出ガス不正問題でブランドが損なわれ、車両の質や商品力にも不満が生じているから、売れ行きも増えないのだ。かつての地味で真面目なクルマ作りを取り戻す必要がある。