ドアまでガラス張りの4座モデルも! ランボルギーニのワンオフモデルを調べたらあまりに自由すぎて衝撃【前編】 (2/2ページ)

4ドアのミウラ兄妹車が誕生する可能性もあった

 ツーリングが倒産したことで、ランボルギーニのボディ製作はカロッツェリア・ベルトーネに委ねられることになった。その第一作となったのは言うまでもなく、あの「P400ミウラ」だが、フェルッチオは「TP400」と呼ばれた、1965年発表の鋼板製のフレームとリヤにミッドシップされたV型エンジンからなるベアシャシーにはさほど興味を持たず、むしろ次なるプロジェクトとしてフル4シーターのGTをラインアップに加えたいと考えていた。

 そこで、当時ベルトーネのチーフスタイリストであったマルッチェロ・ガンディーニが提案したのが、TP400のシャシーをそのまま流用してデザインしたワンオフモデルの「マルツァル」。

 ホイールベースはTP400の2500mmに対して2620㎜まで延長されていたが、それでも後席に十分な空間を得ることが難しいと判明すると、ガンディーニはV型12気筒エンジンの片側バンクのみを使用した直列6気筒エンジンを横置きにリヤに搭載することを考案。

 さらに全面ガラス張りともいえる、キャビンの前後長に匹敵するほどのガルウイングドアなど、斬新なデザインを採用する。内外観で無数ともいえるほどに用いられた六角形のモチーフもまた現代にまで通じるものだ。

 TP400をベースに、流麗でスポーティなボディを得たP400ミウラとマルツァルで話題を独占したランボルギーニ。とくに1966年にデビューしたP400ミウラが世界に与えたインパクトは大きく、当初30台ほどの限定車として売ればよいと考えていたフェルッチオも、ここで大きく方向転換を迫られることになった。

 同時に、ポルシェ911が属する小型スポーツのセグメントに進出するというプランも持ち上がり、同年にはそのスモール・ランボルギーニ(後の「ウラッコ」のプロトタイプ)と、マルツァルにコンセプトを得た4シーターGTのエスパーダの開発がスタートしている。

 一方のP400ミウラにもルーフをカットしたことを始め、さまざまなパートで改良が施された「ミウラ・ロードスター」がカロッツェリア・ベルトーネの手で製作され、こちらは1968年のブリュッセルショーでの展示を終えると、アメリカのILZRO(International Lead Zinc Reseach Orgnization)社に売却。

 彼らは当時の最新技術を駆使してそのリビルトを行った。そしていつしかそれは、「Zn75」の名で親しまれるモデルになった。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
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